てるみくらぶ「大迷惑な破産」が示唆する教訓 ダメなら適切に廃業するのも経営者の務めだ

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このような中、同社は、安く空席を仕入れることができなくなり、在庫確保のために高値づかみをせざるをえなくなり、利幅が小さくなったことから昨年9月期では営業損失は15億円超となり、約75億円の債務超過になってしまっていたと報道されている。

旅行業者は、消費者から旅行代金を受け取り、航空会社や宿などへの支払いは後払いになることから、通常、多少の赤字が出ても資金繰りに余裕はある業種であるが、同社は金融機関から30億円も借り入れていたとのことであり、利益を出せずに資金繰りが厳しくなっていたことがわかる。

さらに、破産時は前受金が100億円もあったのにもかかわらず、手元現金が2億円ほどしかなかったとのことであるから、金融機関から借り入れを起こしてもまったく資金が回らず、消費者からの前受金に手を出して会社固定費の支払いなどにあて、こういった資金繰りの延長線上で現金一括払いの割引システムが導入されたのではないかと考えられる。

売上高を見ると急拡大を図っていたが

民間信用調査会社のデータを見てみると、てるみくらぶの売上高は62億円(2013年)→86億円(2014年)→130億円(2015年)→196億円(2016年) と急拡大を図っていたことになっている。一部は金融機関向けに業績をよく見せる過大表示なのかもしれないが、前受金を資金繰りに回し始めると売り上げの速度が止まれば資金繰りが一瞬で止まるため、ネット広告より単価の高い新聞広告にも積極的に広告費を投じ、顧客の増加を図ることで日銭の確保を図っていたのだろうと考えることもできる。仮にそうであれば、完全に自転車操業となっており、経営者として完全に負のスパイラルに陥ってしまった状態になっている。

事後的に見ると、ここまで大きな負債金額になる前に、誰かがストップを掛けてあげなくてはいけなかった。ところが、実際の現場としては、「あと少し」を積み重ねてしまったのだろう。従業員に給与を支払うために、「あと少し」資金が足りないから金融機関からつなぎの融資を受けて月末の支払いを終える。

また、取引業者には「あと少し」支払いを遅らせ、消費者には現金一括払いという形で「あと少し」受け取りを早くしていく。将来の業況回復を前提とした「あと少し」という資金調達の積み重ねは、業況が回復しなければ、場当たり的な対応にすぎず、負債は雪だるま式に膨らんでしまい、今回の破産劇のような結果を生んでしまうことがほとんどである。

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三戸 政和 日本創生投資 代表取締役社長

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みと まさかず / Masakazu Mito

1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとしてベンチャー投資や投資先にてM&A、株式上場支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業承継・事業再生などに関するバイアウト投資を行っている。堀江貴文氏が主宰する「堀江道場」のオブザーバーなども務める。著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい・会計編』(講談社)など。

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