ひきこもりの少女は人気アニメ作家になった 「ここさけ」「あの花」の作者が自伝を出版
〈イベントを終えて、『ここさけ』の全国上映が正式に始まった。
しばらくして、母親から連絡があった。私の作品をろくに観ないはずの母親が、『ここさけ』は劇場まで観に行ってくれたのだという。母親は言った。
「お母さんも昔、麿里ちゃんに似たようなこと言っちゃったね」
似たようなこと、それは順の母親の台詞をさしていた。
両親の離婚以来、言葉を発せなくなった娘。近所でうわさされる、恥ずかしい存在の娘。そんな彼女に対して、「そんなに私が憎いの?」「もう疲れた」と。〉
映画『心が叫びたがってるんだ。』のタイトルは、岡田さんがつけたタイトルだが、ぎりぎりまで監督に反対された。監督はシンプルに『心が叫びたいんだ。』のほうがよい、と主張した。もともとタイトルにはそこまで思い入れがない岡田さんだが、この時ばかりは、「だったら、まったく違うタイトルにしたい」と反対したという。そこまでして反対した理由に、私は、この本が書かれた意味もあるのかな、と思った。この本は、今、しんどい思いをしている子どもとその親に、長く読まれることになるだろう、と原稿を読みながら確信した瞬間だった。
ただ、ひたすら叫びたいという欲求だけはある
〈『叫びたいんだ。』にしてしまえば、叫びたい何かがもともと存在することになるから。
順と同年代だった頃の私には、それがなかった。
誰かに、どこかに、叫んでぶつけたいことがある訳じゃない。ただ、ひたすら叫びたいという欲求だけはある。胃の中に沈殿する、もやついた名前のない塊のようなもの。それを吐き出したい。
吐き出すことで、その瞬間に名前がついてくれたならと、どこかで願って。〉
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