アドビが「感情は体験の通貨」と説く深い理由 「顧客体験中心ビジネス」のあるべき姿
顧客体験中心ビジネスでは、価格やスピードといった競争から脱却し、自分たちの顧客が何を見て、何を考え、何を経験するのか。その設計と対話を行いながら、ビジネスに特別な価値を作り出し、持続的に成長していくことを目指している。
人々がインターネット、とりわけスマートフォンを持ち歩きながら、つねにつながり続ける行動パターンに移行したことから、企業は、人々の細かな行動や、その根拠となる思考を見いだすことができるようになってきた。また、テクノロジーの普及は、行動や思考を変化させている。
Adobe Experience Cloudのソリューションは、ウェブやアプリ、店頭、メディアとの接触などのさまざまな顧客の行動を統合して分析し、効果的に引き付ける広告や提案を行い、最適なメッセージを届けることができるようになるという。
商品やサービスから「体験へ」と移行している
アドビ・エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるブラッド・レンチャー氏は、基調講演で、「あらゆることが、商品やサービスから体験へと移行しており、人と物のギャップを埋める必要がある」として、顧客体験中心ビジネスの必要性を次のように訴える。
たとえば食であれば、何を食べるかだけでなく、Organic(有機栽培)、Non-GMO(遺伝子組み換えでない食品)、Non-MSG(化学調味料不使用)、またベジタリアンやパレオ(原始的食生活)といった食の主義も存在する。洋服も自分で買うだけでなく、パーソナルショッパー(顧客の趣向や目的に合わせて買い物をサポートする人)も浸透し、レンタルサービスも増えている。ホテルの場合は、宿泊から滞在へと訴求ポイントが変化している。
顧客体験を重視して成功しているブランドの例として、自動運転をパッケージし、体験の購入を意識させたメルセデスベンツ、スマートウォッチだけで船内を過ごすことができるシンプルな体験を実現した世界最大のクルーズ客船企業カーニバルコーポレーション、Amazon Echoに話しかけて宅配ピザを予約できるドミノピザなど、いずれも商品購買を含む体験作りで、顧客満足度を高めている。
「顧客の趣向の変化に合わせた新しいキーワードが必要になった。体験は、購買の必要性に気づかせる原動力であり、体験を作り出すことは、価格競争から脱却した新しいビジネスの波だ」
そう指摘するレンチャー氏は、体験ビジネス作りを前提として、次の4点を指摘した。
1)顧客は、企業が「顧客を知り、尊重すること」に期待している。
2)1つの企業、1つの製品は、顧客に対して、同じ1つの言葉で語れ。
3)テクノロジーはメッセージではなく、透明性を持たせ、体験向上のためのみに活用する。
4)すべてての接点で、顧客を喜ばせること。
レンチャー氏は、これを解決し、顧客体験中心ビジネスを実現するための4つのレシピを披露した。
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