銀行マンの運命を左右する「地銀再編」の大波 今の乱立状態では人口減に耐えきれない

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足元で起きている地銀再編には3つのパターンがある。一つ目が県内の首位地銀と2位地銀による統合。長崎の十八・親和、冒頭の第四・北越がそれだ。二つ目がメガバンク主導の再編で3月に公表された関西の3行のケース。近畿大阪銀行はりそなホールディングスの傘下。関西アーバン銀行とみなと銀行は三井住友フィナンシャルグループ(FG)の傘下銀行である。三つ目が県内トップ地銀の対抗で県内の2位と3位が統合に動く事例。これが2月に発表された三重銀と第三銀に当てはまる。

今後も、地銀再編はこの3パターンを軸に統合が加速していくとみられる。ただし、第一のパターンは、公正取引委員会の壁を越えなければならない。その壁にぶつかっているのが、長崎県の2行である。昨年2月、十八銀行と、ふくおかFG傘下の親和銀行が、2018年4月に合併するという計画を発表した。

公正取引委員会の審査が長引き、長崎県の十八銀行は親和銀行との合併計画延期を余儀なくされた。計画の実現は予断を許さない状況だ

だが、今年に入り、この合併計画は半年延期が決まった。理由は公正取引委員会の審査が完了していないため。十八と親和が合併すると、長崎県内の融資シェアは7割に及ぶ。そうすると、地元企業の選択肢(取引できる銀行の数)が狭まり、競争が実質的に制限される可能性があるというのが公正取引委員会の見方だろう。

要は“待った”をかけられた格好だ。長崎ほどではないが、新潟の第四と北越も統合すると新潟県内の融資シェアが5割を超えるため、公正取引委員会の判断を仰ぐことになるだろう。

県内に3地銀の岩手、山形が注目

長崎をはじめとして「県内1位、2位」の統合が実現すれば、ほかの地域でも雪崩を打って再編が加速する可能性がある。47都道府県のうち3行以上の地銀がひしめくのは14都府県。中でも、人口減少の大きい岩手県と山形県が注目される。国立社会保障・人口問題研究所の人口予測によれば、岩手県の2040年の人口は10年比29.5%減。山形県は同28.5%減。全国平均の16.2%を大きく下回る。岩手県は同減少率でワースト4位。山形県は同5位だ。1位の秋田県、2位の青森県、3位の高知県はすでに県内2行体制となっている。

そうすると、岩手県内で断トツの岩手銀行が、2番手の北日本銀行あるいは3番手の東北銀行と統合する可能性も考えられる。どちらと統合しても融資シェアは5割を超える。山形県では断トツの山形銀行が、フィデアホールディングス傘下の荘内銀行を選ぶか、じもとホールディングス傘下のきらやか銀行を選ぶか。荘内銀行ときらやか銀行の県内融資シェアはほぼ拮抗している。フィデアはかねて「オープンプラットフォーム戦略」を唱え、ほかの地方銀行の合流に前向きだ。山形銀行が動くとすれば荘内銀行が有力だろう。

次ページメガバンク主導や県内2・3位統合のパターンも
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