銀行マンの運命を左右する「地銀再編」の大波 今の乱立状態では人口減に耐えきれない

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第二のパターンの「メガバンク主導の再編」で今後動きがありそうなのは愛知県。三菱東京UFJ銀行で唯一の持ち分法適用地銀は中京銀行。2015年に約64年ぶりに生え抜きの頭取が誕生したが、会長は今も三菱東京UFJ銀行の出身者だ。同じ愛知県で、三菱東京UFJ銀行が第2位株主となっている愛知銀行との統合が有力候補とみられる。

一方、みずほ銀行が筆頭株主である千葉興業銀行も注目だ。県内トップの千葉銀行は武蔵野銀行と業務・資本提携を結んでいる。また、足利ホールディングスと経営統合した茨城の常陽銀行が千葉への南下攻勢を強めることも考えられ、競争が一段と激化しそうだからだ。

第三のパターンの「県内2位・3位の統合」で、今後注目されるのは富山県。2位の富山第一銀行と3位の富山銀行は、頭取がともに日本銀行出身者。富山第一銀行は昨年3月に株式を上場しており、すでに上場済みの富山銀行との再編もしやすい形を整えている。

第一のパターンは公正取引委員会の判断次第だが、メガバンク主導や県内2位、3位の地銀による統合は今後も進むだろう。

大再編に加えてフィンテックの大波も

業界再編の大波が押し寄せる中で、自主独立を貫くか、提携や統合に動くかの判断を問われている地銀は数多くある。ただし、経営統合による規模拡大や効率化をすれば安泰というわけではない。銀行業界にはフィンテックという別の波も押し寄せているからだ。

日経Fintechのイベントで対談する北国銀行の杖村修司専務とfreee(フリー)の佐々木大輔代表。地銀とベンチャー企業の協業事例が増え始めている

フィンテックに対するグローバルの投資額は2016年に232億ドルへ達し、2年連続で200億ドルを超えた。日本はグローバルに比べ額が小さいものの、前年比約2.4倍の1.5億ドルだった(アクセンチュア調べ)。これまでフィンテックベンチャーの手掛けるサービスは家計簿アプリやクラウド会計など周辺分野にとどまっていた。だが最近では、為替、融資、預金という銀行の三大業務にまで拡大している。「フィンテックベンチャーと組まないとこの先は厳しい」と漏らす銀行首脳は少なくない。

金融庁もフィンテックへの対応を行政の重点施策にしている。3月に閣議決定された改正銀行法案では、銀行に対しAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と呼ばれる外部サービスを活用する仕組みの開放を求めている。これは銀行が自前のオンラインバンキング上で顧客を囲い込みづらくなることを意味しており、「(さまざまなサービスを提供する)フィンテックベンチャーに主導権が移る端緒になる」(フィンテック企業関係者)と言われる。法改正を追い風に「小が大をのむ」という事態が起きても不思議ではない。

自前主義にこだわらず、フィンテックを活用してほかの銀行との差別化をどれだけ図れるか。目先の業界再編だけにとらわれない対応が、今の銀行には求められている。

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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