佐藤優「アメリカは世界のセコムになる」 田原総一朗と考えるトランプ政権の本質
田原:また、「世界の警察をやめる」と言っているトランプは、今後、具体的にどうするんですか?
佐藤:「孤立主義」だという人がいるんですが、それは間違いで、トランプは「非介入主義」です。自分にとって死活的な利益のないところには介入しないが、是々非々で儲かりそうなところには介入するという考え方ですね。本当にアメリカにとって死活的に重要なところだったら、どこへでも行く。そうでなければ放っておく。
田原:アメリカのやった戦後の戦争のほとんどで、米軍は日本列島から出撃していった。歴代大統領は、日米同盟は最重要の同盟と繰り返してきた。だから日本は、これまではアメリカにとって死活的に重要だったと思うけど、トランプで変わるのか?
重要度は、以前よりは薄れる
佐藤:重要度は、以前よりは薄れるでしょう。でも、日本にとっては、米軍がいてくれたほうがいい。だから、日本は駐留米軍経費を全額負担しろとアメリカがいえば、日本はあと3割増しくらい出せばいい、と私は思います。自立する軍事力を整備し、核兵器も持って、日本は自衛隊だけで守るとなったら、年に数兆円の防衛費が年に二十数兆円くらいに膨らむでしょう。しかも国民皆兵なんてことになるのはよくない。
田原:アメリカは日本や韓国やドイツに米軍を置いている。トランプは「経費はすべて先方にもたせる。いやといえば撤退する」と公言した。
佐藤:それは、要するに「俺たちは民営化する」と。今までみんなアメリカはタダでサービスする世界の警察だと思っていたけど、これからは世界のセコムになる。だから改めて契約しろ。守ってほしいならあんたが全部払ってくれ、という発想です。
田原:本気でそう思っているんですかね?
佐藤:本気で思っていると思います。アメリカ人はこれまで、格好悪いからそういうことは言わなかったんです。まるで傭兵みたいですからね。
田原:民主主義を広めるミッション、聖なる使命だとかいえば、そりゃ格好いいからね。日本の事情がわかってきたようで、撤退論は撤回しましたけど。
佐藤:でも、いま話したことがトランプの本音です。危険なところには民間の戦争請負会社なんかをガンガン送っていくようになると思います。
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