佐藤優「アメリカは世界のセコムになる」 田原総一朗と考えるトランプ政権の本質
田原:アメリカは、自動車など第2次産業のハードウエアは輸入国。でも、農産物やマイクロソフト、アップル、グーグルに代表されるソフトウエアは大輸出国ですね。自国第一で輸入品に高い関税かけると、相手国がアメリカからの輸出品に対して同じことをやったとき、どうするつもりなのか。
佐藤:だから、アメリカは関税をかけるが、日本には関税をかけさせない。
田原:そんなことできますか?
他国の保護主義は認めないという身勝手なやり方
佐藤:国力を見てみろ、文句あるか、というような感じになる。すごくいやな日米貿易交渉になるでしょう。アメリカにとって重要と判断すれば、自国は保護主義で他国の保護主義は認めないという身勝手なやり方をするでしょう。
田原:でも、トランプはビジネスマンでしょう。ビジネスで一方だけがとことん儲けるなんてことは、ありえない。相手が信用してくれなきゃ商売が成り立たないし、儲からなければ相手も取引を敬遠する。低賃金で労働力の質もよいからメキシコに工場が集まるなんて、ビジネスマンなら当たり前の常識じゃないか。ビジネスマンのくせに、なんでそれがわからないのか。
佐藤:トランプは、アメリカという国を「1つの企業」と考えている。自分は、そのCEOであると。そう思えば、かなりメチャクチャなことをやってくるかもしれません。軍事力まで使える会社だという発想になると、これは危ない。そもそも基軸通貨ドルという強力な武器を持っているし、世界最強の軍事力もある。核の力もある。
無視できないアメリカの武器は“英語”です。インターネットやコンピュータは英語が標準語。そのネットで行き交う英語を、アメリカはNSA(米国国家安全保障局)で大量に盗聴しています。だからアメリカは、世界の最新情報を大量に握っています。たぶん定量的なデータはないだろうけど、世界の歴史の中で、英語という単一言語の通用度が現在ほど高くなったことはかつてなかったでしょう。