佐藤優「アメリカは世界のセコムになる」 田原総一朗と考えるトランプ政権の本質

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田原:そこなんですがね。トランプは「メキシコなどに出た工場を、デトロイトのようなラストベルトに取り戻す」という。そんなことできますか?

佐藤:いや、無理でしょう。アメリカの工場がなぜメキシコに出たかといえば、メキシコのほうが賃金が安く、労働力の質もいいから。賃金が高く、労働力の質が悪いアメリカには戻ってこない。

といって日本の自動車産業は安心できない。アベノミクスをなんとか支えているのは、トヨタ自動車の“一本足打法”ですよ。自動車産業、なかんずくトヨタがものすごく儲けて、日本経済を支えている。トランプ政権が日本車狙い撃ちで関税をかけるとなったら、アベノミクスの根本に影響してしまう。やりかねません。

最初にガツンとかますトランプの手法

田原:トランプは2017年1月、メキシコで生産増強を図るトヨタを名指しして「とんでもない! アメリカに工場を建てるか、国境で高い税金を払うかせよ」と批判した。

するとトヨタは、「メキシコに新工場ができても、アメリカの生産台数や雇用は減らない」と声明。さらに豊田章男社長が北米国際自動車ショー(デトロイト)で「今後5年間にアメリカで100億ドル(約1兆1700億円)を投資する」と発表しました。

佐藤:最初にガツンとかますトランプの手法が、早速功を奏したわけですね。

それで済めばいいですが、この先トランプ政権が日本や中国に関税をかける可能性は、依然としてあると思います。USTR(米国通商代表部)代表は対中強硬派のロバート・ライトハイザー。彼はレーガン政権時代の次席代表で、日本製品の輸入抑制を主導した人物です。

田原:トランプは、大統領に就任して10日も経たないうちに、口先だけで、民間企業から10兆円を超えるようなアメリカに対する投資話を引き出したわけです。それだけでもすごいと思うけど、口先ではない政策は、どこまでやるつもりなのか?

佐藤:自由貿易体制を崩すという発想までは、基本的にないと思うんですね。保護主義一本やりでアメリカが得することはありません。

でもピンポイントの保護主義、たとえばオーストラリアに勝てない砂糖、日本に勝てない自動車などは十分ありうるでしょう。

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