ヤマト、労使で合意した「働き方改革」の全容 これからは社外交渉、値上げを実現できるか

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労使交渉が終わり、これでヤマトの経営陣は一息つけるかといえばそうではない。これからいよいよ社外との交渉が本格化する。交渉の焦点は値上げだ。

ヤマトは今年9月までに、27年ぶりとなる宅急便の全面的な値上げを行う方向だ。「プライシングの適正化」として解決すべき課題の最優先事項として位置づけており、本決算発表にあわせて5月初旬に方針を発表する。

1990年の値上げでは、もっとも小さい60サイズで100円値上げするなど8~12%程度引き上げた。2014年には適正価格の収受として、常態化していた割引をやめるという実質的な値上げで宅急便の単価は3%強上昇した。

再配達の別料金化やエリア別の料金設定など、値上げのやり方はさまざま考えられそうだが、「本気度がこれまでとは違う」と、市場関係者では10%を超える値上げ幅を予測する声が多い。処遇改善や人手不足を考えれば、今後も人件費の負担は増す。中途半端な値上げで終わってしまえば、数年後には再び同じ事態に陥りかねない。

同業他社もヤマトの交渉を陰から応援

17日のヤマトホールディングスの株価は前日比2%超下落した。労使合意を受けて、賃上げや処遇改善で人件費が一段と増加することから、業績へのマイナス影響が懸念される一方、値上げ幅には依然として不透明な点が多いためだ。

ヤマトの荷物を請け負うこともある軽貨物運送業の関係者は「ヤマトは同業他社が追いつけない宅配インフラを築いている。ここで荷主に対する下請け体質を変えなければ、業界全体が変わらない」と値上げの動向を祈る気持ちで見守っている。業界のリーダーとして中長期的なサービス維持を見据えた価格改定を断行できるか。ヤマトの動向に一層の注目が集まる。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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