牛丼やビールが突然「健康に良く」なったワケ 急増する機能性表示食品、問題はないのか

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各社がこぞって機能性表示食品を投入するのはなぜか。アサヒ飲料の大越洋二マーケティング本部長は「トクホの審査には1〜2年かかるが、機能性表示食品なら発売60日前までに届け出ればよい。需要の変化にタイムリーに対応できる」と説明する。

同社は4月4日、カルピスブランドで初めての機能性表示食品「カラダカルピス」を発売する。うたい文句は「乳酸菌で体脂肪を減らす」だ。体脂肪関連の機能を訴求する商品は多く競争が激しいが、近年の乳酸菌ブームを追い風に攻勢をかける。

トマトジュースは売り上げ7割増

機能性表示は新商品だけではない。トマト加工品で国内最大手のカゴメは、1933年発売のロングセラー商品である「カゴメトマトジュース」を16年2月から、「血中コレステロールが気になる方に」という機能性表示を加えて販売した。

中身や値段は変わっていないのに売り上げが急速に伸び、出荷数量は表示追加前と比べて73%増加した。

「トマトに含まれるリコピンの健康機能の科学的根拠を示すために、1300本以上の論文を調査した。ただ、トクホにする場合は商品を用いた臨床試験が必要なため、よりコストがかかる」(カゴメ・マーケティング本部の加藤宣司主任)という。

同社は1973年発売の「カゴメ野菜ジュース」も、5月に機能性表示を加えて販売する。トマトジュースでの成功を横展開する目算だ。

一方、トクホ中心のために対応が遅れた企業もある。「2年でここまで広がるとは思わなかった」と舌を巻くのは、サントリー食品インターナショナル・ブランド開発第一事業部の鵜飼太祐部長だ。

国内飲料シェア2位の同社は、「伊右衛門 特茶」や「黒烏龍茶」などのトクホ商品を次々と世に送り出してきたが、機能性表示食品は発売していない。今後はトクホ中心の路線を維持しながらも「魅力的な表示があれば」(同氏)、機能性表示食品にも取り組む方針だ。

市場が急速に拡大する機能性表示食品だが、制度への信頼を失墜させかねない事態も起きている。

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