住宅ローンの借り手も条件も限界にきている 追い詰められた銀行の住宅ローン狂想曲

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短期金利が上昇するというシナリオは当面現実的ではないだろう。しかし、いずれにしても、このような10年、20年先の不確実性を背負ったまま消費を拡大するのは難しい。現在、住宅ローンを返済中の世帯が月々の返済に充てている金額は、平均で可処分所得の19%に当たる。金利低下で減少傾向にあるものの、勤労世帯全体に占める住宅ローン返済世帯の割合は39.4%(2016年)で、近年上昇している。これらの世帯の消費性向は65.1%と、住宅ローンのない家計よりも13ポイントも低い。

住宅を「資産」として活用する仕組みを

インフレ率が上昇すれば、徐々に賃金も増え、消費が活発化すると考えられている。しかし、おそらく同時に短期金利が上昇し始めたときに、住宅ローン返済世帯が素直に消費を増やすことができるかどうかは疑問だ。

日本の場合、中古住宅の売買市場は小さく、価格は新築時より下落してしまう。住宅を売らずに価値を利用しようにも、米国のようなホームエクイティローンやリバースモーゲージは、さまざまな条件が現実的ではなく、ほとんどないに等しい。借金を増やすことが健全とは思わないが、無担保ローンを借りる中高齢者が増加しているとみられる中、せっかくの資産をまったく活用できないのは合理的でない。

日本では、60歳以上の持ち家率は80%以上と極めて高い。これらがなんらかの形で"資産"として活用できる道を開けば、もう少し安心して消費を増やせるのではないだろうか。

大槻 奈那 ピクテ・ジャパン シニア・フェロー

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おおつき なな / Nana Otsuki

東京大学文学部卒業。邦銀勤務の後、ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月よりマネックス証券 執行役員。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務。共著で、『S&P 日本の金融業界』シリーズ(東洋経済新報社)、『リテール金融のイノベーション』(金融財政事情研究会)、『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)など。ロンドン証券取引所 アドバイザリーグループ・メンバー。政府委員を歴任。

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