「地球温暖化の災いは貧しい国々を直撃する」−−ラジェンドラ・パチャウリ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長

「地球温暖化の災いは貧しい国々を直撃する」−−ラジェンドラ・パチャウリ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長

昨年、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)はアル・ゴア米前副大統領とともに、ノーベル平和賞を受賞した。IPCC議長として第4次報告書をまとめたパチャウリ氏は温暖化が貧しい国により深刻な影響を与えることに危機感を持っている。被害を最小限に食い止めるためには、2015年までにCO2排出をピークアウトさせなければならない、と説く。

--IPCC第4次報告書は南アジアなどのデルタ地帯が地球温暖化により大きな被害を受ける可能性があると警告しています。

海面上昇がいくつかの国や地域に対してすでに影響を与えている。サイクロンによって大きな被害を受けたミャンマーが一つの例。おそらく100年前であれば今ほど大きな被害はなかった。海面上昇により、海岸から押し寄せる水量が100年前よりずっと多くなっている。

--CO2排出を削減するために資金を使うより、まずは堤防をしっかり造る必要がありそうです。

もちろんそうするべき。しかし、そのためには大きな資金が必要になる。海面上昇の影響を受ける国々は貧しく、対策は思うように進まない。CO2排出により問題を起こしたのは先進国であるにもかかわらず、地球温暖化の結果、最も大きな被害に遭うのは貧しい国の人々だ。

--排出量の多い中国、米国がなかなか削減目標を立てようとしない。そうした中で15年までにCO2排出をピークアウトできますか。

可能だ。そのために必要な技術はすでにそろっている。15年までに排出量をピークに持っていき、その後は排出を減らしていかなければならない。ただ、米国と中国は区別しなくてはいけない。国民1人当たりの排出量という点で、中国は米国よりずっと少ない。

--インドでは、タタの「ナノ」が発売される。高速道路網もできて、これからモータリゼーションが進んでいく。それでもピークを15年にすることは可能でしょうか。

発展途上国に対しては開発の余地をある程度認めなくてはならない。多くの人は電気を使ったことが一度もなく、村には道路さえない。たとえば先日、デリーの北にあるウタラカンという山岳地方に行ったが、その村には道路がない。病院は50キロメートルも離れているが、病気になるといすに乗せた病人を歩いて運ばなければならない。途上国は、貧困の問題を解決するためにまだまだ多くの開発がなされなくてはいけない。そして、そのためには化石燃料の消費が必要になる。

インドでモータリゼーションが進んでいくことも間違いない。これは止められないが、地下鉄などの公共交通の整備を進めることで排出の増加を抑えることはできるだろう。長距離移動についても、新幹線のような高速鉄道網を整えれば排出増を抑えられる。

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