「地球温暖化の災いは貧しい国々を直撃する」−−ラジェンドラ・パチャウリ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長

--日本では政府が排出量のキャップをはめることに反対する声が強い。APP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)などを通じてセクター別に排出削減を進める手法をどう評価しますか。

世界は今、低炭素社会へと動きつつある。その中にあって現在の日本は非常に先進的な技術を持っており、日本の産業界の技術や能力は世界トップクラスだ。文句なしに、世界に対してリーダーシップを取れる位置にある。それなのに、リーダーシップを発揮しなければ、日本にとって大きな損失ではないか。確かにAPPは問題解決の一助になるかもしれないが、それはほんの小さな一助だ。本当に問題を解決するためには、先進諸国が削減目標をきちっと設けなくてはいけない。たとえば、20年までには温室効果ガスを大きく削減するというふうに。

--CO2排出権の価格は今よりずっと高くなり、将来は1トン当たり100ドルになると発言しています。

地球温暖化に伴う被害など社会コストが高くなっていく中で、これから先、炭素価格が100ドルに上昇していくことは間違いないと思う。それにより低炭素の技術を開発する動きはいっそう強まるだろう。炭素の価格は最終価格にも転嫁されるため、消費者も排出が少ない製品を選ぶようになるはずだ。

--炭素排出が大幅に削減された後の社会のイメージとは。

人々は燃料電池自動車など今よりもずっと効率性の高い車に乗っているだろう。また、今よりも多くの公共交通手段が使われていると思う。大気汚染の問題はずっと軽減され、各国のエネルギー安全保障は今よりもずっとよい状態になる。

冷蔵庫もエアコンも効率がずっと高くなる。それから夏であってもエアコンの室温設定を上げ薄着で生活するようになる。人々は動物の肉を今ほど食べなくなり、今よりもずっと健康になっていると思う。

--14年までにまとめる第5次報告書でも議長を続けていますか。

9月に選挙が行われる。続投の意思を表明したが、選挙の結果がどうなるかは私にはわからない。

第5次報告では、もっと地域ごとの詳細な気候変動予測を行うことになる。それから、新たな技術動向などを加味し将来へ向けた新しいシナリオセットも入ってくる。そのため、将来予測に関しては、第4次報告書とは異なったものが出てくる可能性もある。

--ノーベル平和賞受賞で人生観は変わりましたか。

生活が大きく変わりました(笑)。いろいろなところから講演を頼まれ、世界中を飛び回っている。心が痛むのは飛行機で移動するたびにCO2を排出していること。植樹に募金をするなどしてオフセットするよう努めています。

(週刊東洋経済)

Rajendra Kumar Pachauri
1940年インド北部ナイニタール出身。米ノースカロライナ州立大学で生産工学、経済学の博士号を取得。インドエネルギー資源研究所所長を務めるなど、同国エネルギー政策の権威。IPCCでは副議長(コミュニケーション戦略を担当)を経て2002年に3代目議長に選出され、第4次報告書をまとめた。菜食主義者として知られる。

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