いざ統合へ! ビクター・ケンウッド両トップに直撃−−佐藤国彦・日本ビクター社長
--ニッチなビジネスに特化していくということですか。
装置型、設備型の事業を持つ企業はリソースの規模で勝てるでしょうが、われわれは装置型じゃない。どちらかというと(生産分業する)水平型。だから価格勝負のボリュームゾーンの次に需要が多く、付加価値が必要となる「中の上」ゾーンを主力にする。たとえば、iPodと接続できるディスプレーや、スリムタイプの液晶テレビなど。それより下のゾーンは(業務提携した)船井(電機)さんのOEM等でやります。
--現在、ソニーなどは超低価格品を発売して攻勢をかけています。価格破壊が進む市場で、高めの商品を売るのは難しくありませんか。
ですから、(ベストバイ、ウォルマートなどの)巨大な量販は攻めません。大手と同じ販路なら価格も同じ水準で勝負しなければならないですから。われわれが攻めるのは地方の量販や専門店です。彼らもまた、大手量販と同じ粗利水準ではやっていけないんですよ。そこで、値段が高いわれわれの商品を売れば、彼らは粗利が稼げる。
--メガでなくニッチな販売チャネルで勝負をする?
地域量販の売り上げは年間1000億~2000億円ぐらいありますから、ニッチではないですね。ただ、なぜビクターが高いのか、その付加価値を店頭できちんと説明してくれるような店を選ばないとダメなんですよ。そういった販路はアメリカ全体の30%くらいあるかな。それで、十分勝負になります。
--ほかのメーカーはその販路には来ていないのですか。
いや、みんな来てはいますよ。でも多くは大手量販を中心にやりますから。対抗上、地域量販は、むしろ大手でガンガン売っていない商品やブランドをサポートしたいんです。
--ビクターと共存共栄の関係が成り立つわけですね。
そうそう。地域量販はわれわれのテレビを売ったほうが利益が上がる。われわれも彼らに説明してもらったほうが、お客さんによさを理解してもらえる。つまり、利害が一致するんです。そこが、われわれの生きる道です。
--経営統合を目前にした今、ビクター社員はケンウッドと同じ方向を目指しているのでしょうか。以前は、ビクターがケンウッドを格下に見ている空気が感じられました。
去年の7月と今とでは違うね。空気は変わりました。特にカーオーディオは、(開発合弁会社という)一つの傘の下でいろんなことをやっている。お互い協力しないと何もアウトプットが出ないので、今日も侃々諤々(かんかんがくがく)やっていましたよ。3日に1回くらいは集まっている。私はブランドを尊重しつつも市場では正しい競争をしてくれと言っています。お互い同じ傘の下にいる連れ子同士だよねと考えていてはダメなんだよね。販売面では正しい競争をする、そこに対等の精神を持つ。そのバランスをうまく取るのが、(持ち株会社の社長に就任する)私の仕事だと思っています。
(聞き手:中島順一郎 杉本りうこ 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)
さとう・くにひこ
福島県出身。國學院大学経済学部卒業後、1968年5月日本ビクター入社。テレビの海外営業など海外畑を長く歩み、2006年専務、07年6月から現職。63歳。
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