いざ統合へ! ビクター・ケンウッド両トップに直撃−−佐藤国彦・日本ビクター社長
はたして、ビクターは本当に生まれ変わり、新しい時代を築けるのか。両社首脳にインタビューを行った。まずは、ビクターのトップである佐藤国彦氏からその本音を聞く。
--ケンウッドとの経営統合発表から1年。社長就任1期目でもありましたが、ここまでどう取り組んでこられましたか。
去年はわが社のルネサンス、歴史上の大きな転換点でした。50年以上続いた松下(電器産業)の連結から外れ、ビクター生え抜きだけの経営陣で構造改革をやりました。これまでの雇用改革では、大事な人材がビクターを去っていった。これを今後続けないためにも、雇用だけでなく事業も変えていこうと。従来と違うのは事業構造そのものに手を入れたことです。
--確かにプリント配線板事業の売却や国内外工場の閉鎖など、事業の選択と集中を進めました。
投資と撤退のルールでもってきっちり判断しようと、夜中まで議論した結果です。ルールは三つ。まずその事業が世の中で伸びているかどうか。次に、他社に対しわれわれが強いリソースを持っているか。最後に投資回収ができているかどうか。たとえばプリント配線板は、他社に比べて技術力はあり、市場もデジカメ需要で伸びている。ところが、投資回収ができていない。
--そのルールで赤字のテレビ事業を考えると……。
第1に市場は伸びています。第2にリソースの面でも、他社に勝てる技術を持っている。第3の投資回収ができていないけれど、1番、2番はクリアしている。投資回収の問題さえ解決すれば、この事業は基幹事業になるという判断です。
--投資回収できないというのは最大の問題です。市場と技術があるから頑張るというのは順序が逆ではないですか。
投資回収ができていないのは国内。ディスプレーの売り上げの4分の1が国内だけれども、赤字の半分も国内から。だから、ビジネスを今まで手薄だったアメリカと、これまでもやってきたけれどまだ伸びる欧州、アジア中心にしました。
--確かに国内の液晶テレビ販売を大幅縮小します。今までその判断ができなかったのは、企業体質の問題やしがらみがあったから?
これまでもいろいろ手を打ってはいたんですよ。しかし、それ以上に世の中の変化が激しかった。そうはいっても、じゃあ、他社が国内で儲かっているのか。テレビ1台当たりの赤字がうちよりはるかに多い会社もある。他社はほかに収益源を持っていて、われわれにはそれがあまりなかったという違いだ。
とはいえ、テレビは家電の中心だから簡単に手放せないし、ビクターの企業価値の一部でもある。ただし、その前提条件は黒字であること。国内を縮小して海外でやるのは、ステークホルダーに対して、黒字化するというコミットメントなんですよ。
--日本市場で不振のまま、海外に戦いに出るというのは離れ業的にも思えます。
そうかな。たとえば韓国のサムスン(電子)は日本では成功していませんが、海外では(多くの製品が)トップシェア。日本は難しいマーケットなのです。それに国内をまったくやらないわけじゃない。ホームシアターと業務用ディスプレーに特化します。業務用は今、(売上高が)年80億円くらいですが利益率がいい。これは間違いなく投資回収できる。10年ごろに300億円ぐらいにしようと思っているのですよ。