将棋連盟、動議で幹部3人解任の「異常事態」 漂流続ける将棋界に次々浮上する問題

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もともと6日の臨時総会は谷川浩司元会長と島朗元常務理事の辞任を受けて、新たな理事2人を選任するためのものだった。同総会は佐藤康光九段と井上慶太九段を新理事に選出。直後の理事会で佐藤九段は、理事の互選で会長に選ばれたのだった。

昨年12月27日の会見。右から2番目が谷川浩司元会長。谷川元会長から左へ、青野照市元専務理事、島朗元常務理事、中川大輔元常務理事。この会見の翌月に2人が辞任。さらにその翌月に2人が退任することとなり4人全員が常務会(常務理事以上の理事で構成)から姿を消した(撮影:今井康一)

そして谷川元会長や島元常務理事がなぜ辞任したかといえば、それは昨秋以来の未曾有の不祥事への責任を取るためだった。

連盟は、複数棋士の話などを根拠とし「三浦弘行九段が対局中に頻繁に離席するなどして将棋ソフトを参照した」と断定。2016年末までの対局禁止処分を下した。これにより、三浦九段は当時挑戦者に決まっていた竜王戦への挑戦権を失った。三浦九段は将棋の7大タイトルの1つ、棋聖を獲得したことのあるトップ棋士の一人。名人戦への挑戦権を競うリーグ戦のトップに当たるA級順位戦を戦う10人の棋士の一人でもある。

ところが、第三者委員会が調べたところ、疑惑の発端となった「30分以上の離席」は存在すらせず、「9割以上」と疑われた三浦九段の指し手とソフトの指し手の一致率が、実は同一局面・同一ソフトでも2割程度の誤差があることが判明。証言の信ぴょう性や一致率の誤差について、処分を下す前に精査しなかったことが、三浦九段に結果的に濡れ衣を着せることになった。その後に辞任した島九段は、昨年12月27日の会見で「痛恨のミス」と苦渋の表情で語っていたほどだった。

新たに浮上した3つの問題

2月27日の会見では、新たな問題が3つ浮上した。まずは、渡辺明竜王が「自ら釈明したい」としている問題である。

今回の濡れ衣事件の発端は、竜王戦の最中に「『疑惑の挑戦者(仮題)』のようなタイトルの記事」(青野元専務理事)が週刊誌に出るという情報を得て、竜王戦が中止に追いこまれることを連盟がおそれたためだ。この「週刊誌」とは『週刊文春』(2016年10月27日号)を指す。『将棋「スマホ不正」全真相』という記事は、渡辺竜王が三浦九段を連盟幹部に内部告発するまでの経緯が、渡辺竜王のコメントを引用しながら、展開されている。

ところが、昨年12月下旬に第三者委員会が報告書で、「三浦九段はクロではない」とすると事態は急変。渡辺竜王は1月17日の竜王就任式で「メディアの取材に対応したことにより、三浦九段にご迷惑をかけたことを申し訳なく思う」と間接的に謝罪したが、これでは将棋ファンの気持ちは収まらない。ネット上を中心に、「渡辺竜王が騒ぎ立てなければ今回の濡れ衣事件は起きなかったのではないか」という声が増えてきている。そのことについて、渡辺竜王は「釈明したい」と2月に入ってから言っているのだ。

次ページそれに対する連盟の対応は?
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