「日本国籍」取得した元米国人の斬新な本音 国籍とはもっと柔軟な概念であるべきだ

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帰化に踏み切ったもうひとつの理由は、永住ビザと国籍の違いだ。永住資格も国籍も永久に日本に住み続けることができるため、はた目からは大した違いがあるようには感じられないかもしれない。しかし、当事者にとっては、実はそこには重要な違いがある。「外国人」として日本に滞在し続ける許可が政府から与えられるのが永住資格であるのに対して、国籍とは、それに伴う保護も含めて日本国民として滞在し続ける権利があるということだ。

ここでカギとなるのが、「許可」と「権利」である。日本に生活の拠点を築いている人にとって、ビザは奪われたり、失効したりする可能性があることから、永遠にビザで滞在するという考えは不安定なのだ。そのうえ、個人的レベルでいうと、国籍を取得するということは、永久によそ者として滞在する代わりに完全に日本社会の一部となる一歩を踏み出すということでもある。Pさんは「社会の端っこで生活するのは嫌だと思った」と話す。

さて、日本国籍を取得するにはどういう手順を踏む必要があるのだろうか。まず、国籍取得の申請をするには5年以上滞在している必要がある。そのうえで、法務大臣の許可を得てから、書類審査を受けなければいけない。

私の場合、米国での人生のすべてにかかわる書類をひととおりそろえる必要があった。それには、兄弟の出生証明書から両親の結婚証明書、米国市民権の証明書まで、日本で新たな戸籍を作るのに必要なものがすべて含まれていた。このほか、日本での収入証明書や現在の戸籍や住民票、納税申告書の控え、そして、ほかにも日本での安定した生活を証明するさまざまな書類が必要だった。たとえば、職場と家までの手書きの地図、私が住むアパートの外観と部屋の写真まで用意する必要があった。もうひとつ、日本国籍の取得を目指す動機書も提出しなければならない。

米国籍取得のほうが難しい?

地元の区役所や税務署から証明書などを得るのは大した手間ではなかったが、米国からすべての書類を取り寄せるのには数カ月かかった。帰化するにはこのほか、即興のスピーキングとライティングのテストがあったが、初歩レベルの日本語力しか求められないため、いずれもそれほど難しくない。さらに詳細な家庭訪問が必要な場合もある。私の場合、最終的に13カ月かかったが、そのほとんどは書類審査を待つ時間だった。

一方、米国籍を取得するのは、これより長期間かかり、難しいと感じる。たとえば、国籍を取得するための試験。日本では基本的な会話と自由テーマの文章を2段落ほど書くだけなのに対して、米国籍を取得するにはスピーキング、リーディング、ライティングから成る英語のテストのほか、米国の歴史や政治にかかわる試験も受けなければいけない。日本では申請から承認までに要する期間は平均1年間であるのに対し(出身国によってさらにかかるケースもある)、米国の場合は早くて半年だが、数年かかる場合もある。

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