損保のアジア戦略は長期戦で挑む 東南アジア最大手を狙う三井住友海上の「辛抱」遠慮

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国内ジリ貧の損保各社 アジア開拓に照準

一方、国内の損保事業はジリ貧が続いている。08年3月期決算でも、主要損保9社のうち、一般事業会社の売上高に当たる収入保険料が前年比でプラスを維持したのは、あいおい損保だけだった。この3年ほどクローズアップされた、保険金不払いや取りすぎ問題は一応収束しつつあるとはいえ、自動車の無事故無違反割引の進展に伴う保険料単価の低下、若年層のクルマ離れ、普通乗用車から軽自動車へのシフトなど、損保の主力商品である自動車保険を取り巻く環境は厳しさを増す一方だ。

そのような中、各社は雪崩を打つように、新たな収益源を海外に求め、施策を加速させている。

国内最大手の東京海上ホールディングスは00年以降、インドでゼロから損保会社を立ち上げたのみならず、生損保計13の案件に出資。07年12月にはエジプトにイスラム金融保険の合弁会社を設立した。

損保ジャパンはインド、中国、ブラジル、東南アジアなどへ進出。特にインドでは、JV方式で国営銀行2行、民間銀行1行と組んで07年12月に営業を開始した。また、05年に日系損保で初めて現地法人化を認可された中国でも、複数の都市に営業拠点を構え、顧客開拓を本格化させている。三井住友海上も、英保険会社のAVIVAのアジア部門、台湾の明台保険を買収。アジアにおける橋頭堡を着実に築いている。

M&Aなど派手なニュースばかりが脚光を浴びがちだが、その舞台裏で各社は、アジア各国の保険監督庁や保険会社に技術の啓蒙・支援を行ってきた。三井住友海上は中国・西南財形大学で講座を開講。ミャンマー、カンボジア等でもセミナーを実施している。また東京海上も、広東省や江蘇省、天津省の保険同業協会などへ、中国にはない保険商品の説明や約款のあり方、補償範囲の考え方などのセミナーを開催している。

今や「ASEANで最大の保険会社」を自負する三井住友海上。市場育成の初期段階から参画し、長期で収益機会をうかがう--。地道なプロジェクトが各地で動いている。

(筑紫祐二 =週刊東洋経済)

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