メタンハイドレートは、シェールガス上回る切り札 政府は1兆円を投じて100年分のエネルギー採掘へ?

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しかして、世界に冠たる日本の高度技術力はこれをやり遂げてしまった。また、最近になって海底7000mでも水圧に屈することなく動き回れる海洋艇の開発にも成功しており、メタンハイドレートの深海に眠る分の採掘には有効な手立てが整った。

政府見通しの「2023年商業生産」から前倒しも?

こうした状況下で先ごろ、天然ガスプラント大手の千代田化工建設は100億円を投じ、天然ガス/海底原油採掘大手の英エクソダスを買収し、メタンハイドレート開発にはずみをつけた。こうなれば、ライバルの日揮や東洋エンジニアリングなどのプラントメーカーも黙ってはいないだろう。何しろ、天然ガスプラントは日本メーカーの独壇場であり、圧倒的強さを誇る。高度な技術力を持つ各社が、メタンハイドレート開発に全力を上げていけばかなり早い時期の実用化が期待できるのだ。

政府の見通しでは、10年後の2023年をめどにメタンハイドレートの商業生産開始としているが、これを前倒しするような話が先ごろ筆者の耳に飛び込んできた。アベノミクスで世界の注目を浴びるその人、つまりは安倍首相が先ごろ日本政策投資銀行の幹部を呼び、「メタンハイドレートに日本政府は命をかける。1兆円の資金を投入したいから、あらゆる準備をしたい」とひそかに指示したというのだ。米国発のシェールガス革命をうらやましげに指をくわえて見ていた日本は、「メタンハイドレート革命」という世界初の快挙を成し遂げるべく、全速全開で開発の方向に狙いを定めた。

渥美半島沖の海底探査に続いて、日本海の佐渡エリアにおいてもJX日鉱日石開発のテスト採掘が始まる。さらに、小笠原諸島の南鳥島にはメタンハイドレートだけでなく、コバルトマンガンなどのレアメタルやレアアースも確認されており、レアアースは日本海側にもあるといわれている。

推定埋蔵量は中国の約30倍ともいわれるこれらのレアアースを採掘できれば、中国に依存していた希少金属の世界でも日本は一歩抜け出せることになるのだ。考えてみれば、今から約20年前、日米の両国で、GDPは世界の約40%もあったのだ。もう一度東京オリンピックを!もう一度日本の大復活を!

泉谷渉(いずみや・わたる) 
株式会社産業タイムズ社代表取締役社長。神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。1977年産業タイムズ社に入社、91年に半導体産業新聞を発刊、編集長に就任。現役最古参の半導体記者としてキャリア35年を誇る。日本半導体ベンチャー協会理事としても活躍。
近著に『シェールガス革命で世界が激変する』(共著、東洋経済新報社)、主な単著に『ニッポンの素材力』、『ニッポンの環境エネルギー力』、『1秒でわかる!半導体業界ハンドブック』(以上、同)、『日の丸半導体は死なず』(光文社)、『100年企業~だけど最先端、しかも世界一』(亜紀書房)などがある。 
泉谷 渉 ジャーナリスト

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いずみや わたる / Wataru Izumiya

株式会社産業タイムズ社代表取締役社長。神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。1977年産業タイムズ社に入社、1991年に半導体産業新聞を発刊、編集長に就任。現役最古参の半導体記者としてキャリア35年を誇る。日本半導体ベンチャー協会理事としても活躍。主な著書に『これが半導体の全貌だ!』『これがディスプレイの全貌だ!』(以上、かんき出版)、『ニッポンの素材力』『ニッポンの環境エネルギー力』『1秒でわかる!半導体業界ハンドブック』『1秒でわかる!先端素材業界ハンドブック』『素材は国家なり(共著)』(以上、東洋経済新報社)、『日の丸半導体は死なず』(光文社)、『100年企業、だけど最先端、しかも世界一』(亜紀書房)などがある。

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