犯罪者の逮捕歴をネットから削除すべきか? グーグルが直面した、「忘れられる権利」
「忘れられる権利」はどこまで認められるのか――。
グーグルの検索サイトで、ある男性の氏名を居住地の県名と一緒に検索すると、男性の5年前の児童買春容疑での逮捕に関する事実を含むウェブサイトの検索結果が表示される。男性はグーグルに検索結果の”削除”を求め、裁判所に仮処分を申し立てた。
さいたま地裁は申し立てを受け入れ、グーグルに対して削除を命じる仮処分決定を行い、グーグルからの保全異議に対しては、男性の「忘れられる権利」に言及して異議を却下。わが国で初めて、忘れられる権利を認めた司法判断として、注目を集めていた。だがその後、東京高裁は、原決定を取り消して申し立てを認めず、その際、男性による忘れられる権利の主張を法律上の根拠がない、として退けている。
地裁と高裁で真っ二つに分かれた判断。そして2017年1月31日、最高裁は、「検索結果は削除されない」とする、高裁の決定を支持したのだ。
「削除」の要求は認められなかった
以下、最高裁の決定について、法的論点を中心に問題を整理したい。
削除命令の対象とされたのは、5年前(=申し立て時の3年前)の児童買春容疑での逮捕事実という、過去の不利益情報を表示する、サイトの検索結果(表題、抜粋やリンク)である。申し立ての相手方とされたのは、検索事業を提供する米グーグルだった。
グーグルとしては、検索結果を自動的・機械的に生成するプログラムの管理を行っているに過ぎないので、情報の媒介者であり、法的責任の主体とならないと主張。ただし、最高裁は、検索プログラムは検索事業者の方針に沿った結果を得られるように作成されたものだから、検索結果の提供は検索事業者自身の”表現行為”であるとした。
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