トランプ大統領は、中間選挙を控えた共和党議員たちの不安を和らげ、経済政策に対する支持を獲得する必要がある。トランプ大統領が政権運営に勢いをつけるためには、期待されてきた経済に向けた好ましい政策を、議会で着実に立法化していく必要があるからだ。ようやく閣僚の議会承認が進み、経済政策に関する議会審議が本格化するこれからが、トランプ大統領の正念場である。
トランプ大統領にとって気掛かりなのは、「トランプ流」を押し通そうとした反動で、経済に好ましい政策の実現が、さらに後ずれしかねない点である。移民・難民の入国禁止をめぐる混乱や、フリン補佐官が辞任する原因となったロシアとの関係などについて、議会にはトランプ大統領への不信が高まっている。議会で多数党を占める共和党の議員が大統領を支持しきれないと判断した場合には、経済政策に関する今後の議会審議にも悪影響が及ぶ。
トランプ大統領が混乱収束に向けたダメージコントロールに体力を割かざるをえないことも、経済政策の実現には暗雲だ。トランプ大統領は、2月28日に議会で演説を行う。本来であれば、経済政策への賛同を呼びかけるべき演説だが、このままだと、入国規制に関する正当性を主張するなど、経済政策以外の論点が注目される展開になりかねない。
「現実派閣僚」が実権握る可能性も
「壁」がプラスに働く可能性はある。クリントン政権がガーゲン氏を招聘したように、政治経験の浅い大統領が直面してきた壁は、過激な政策の角を取り、新しい政権が円滑な政策運営に軌道修正する機会を作り出してきた。トランプ政権においても、フリン補佐官の辞任によって、ジェームズ・マティス国防長官を筆頭とした現実派が、外交・安全保障政策の中心となってきた気配がある。経済政策においても、ゲーリー・コーン経済担当補佐官は、議会などとの根回しに心掛けた政策立案を進めているという。
スティーブン・ムニューチン財務長官など、主要な経済閣僚の議会承認が遅れる中で、国家経済会議(NEC)の議長を務めるコーン補佐官は、減税や規制緩和など、トランプ政権の経済政策の立案を一手に引き受けてきたもようである。米金融大手ゴールドマン・サックス社の社長兼最高執行責任者(COO)にまで上り詰めた実力者であり、多いときには1日に5回も呼び出されるほど、トランプ大統領の信任を得ているといわれる。
トランプ大統領にとって幸いなのは、米国経済が好調であることだ。トランプ政権のつまずきにもかかわらず、米国の株式市場はおおむね好調を維持してきた。中小企業の景況感などを見ても、将来に対する楽観的な雰囲気は明らかだ。
減税やインフラ投資など、経済政策に関する議会の審議は、早くても今年の夏ごろまでは終わらない。「政策への期待」だけでつなぐには、いささか長い期間である。トランプ大統領が体勢を立て直すには、引き続き好調な米国経済の後ろ盾が必要になりそうだ。
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