ドル円は結局「円高」「円安」どっちになるのか

「動かない」のか、それとも「動けない」のか

ドル高円安の流れが一服した理由は、いろいろ考えられるのだが、筆者は、やはりトランプ米大統領による「ドル高けん制発言」の影響が大きいと考える。

東京時間での1月18日未明、トランプ氏はウォール・ストリートジャーナル紙(WSJ)とのインタビューで、「現状で、米国企業が中国企業と競合することは不可能だ。ドルが強すぎるためだ」との見方を示した。ドル高については「中国が自国通貨を押し下げていることが原因」と指摘しており、このとき「アメリカが狙い打ちしているのは円ではなく、人民元に限定されている可能性がある」とみられていたことで、ドル円は、その後1ドル=114円台まで値を戻す場面がみられた。

だが、東京時間2月1日未明、トランプ米大統領は「ほかの国々は資金供給と通貨安への誘導で有利になっている」「中国や日本は、為替を操作して通貨安に誘導している」とコメントしたことで、ドル円相場は1ドル=111円60銭までドル安円高が進行した。

その後実施された日米首脳会談では、日本の金融政策に対する指摘はなかったとのことから、ドル円は小康状態を保っている。ただ、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言がより「タカ派(利上げに積極的)」色を強めているほか、1月の米小売売上高や、消費者物価指数が市場予想を大幅に上回るなど絶好調な米国経済指標の発表が相次いだにもかかわらず、ドル高円安に転じる気配は一向にみられない。

ドル高が進みにくい背景として、米金融当局と市場関係者との利上げ回数の見込みが異なることも挙げられる。FRB関係者が想定している年内の利上げ回数は3回とみられ。一方、民間では、昨年の利上げが外部環境などの影響を受けて1回にとどまったことなどから、「年内の利上げ回数はほぼ2回」との見込みだ。実際、足元の強い米国経済の情勢を考慮し、米大手証券のJPモルガンは次回米利上げ予想を前倒ししたが、6月から5月に変更しただけで、年内2回の利上げを予想している(残り1回は9月)。たった1回、わずか0.25%の違いだが、為替市場に与える影響は大きい。

1ドル112円台~114円台のモミ合いが続きそう

では、ドル円は、今後、結局は「往って来い」、つまり、巻き戻しの流れが強まり、昨年11月上旬の100~105円水準まで戻るのだろうか?

今のところ、その可能性は低いと考える。その理由もまたトランプ米大統領が深く関係してくる。トランプ米大統領は、企業が海外で儲けた資金を国内に還流させる場合の税率を下げると明言している。

トランプ大統領は、国内還流まで認めていた延期措置を廃止するとともに、税率を現状の約40%から15%に引き下げる(1回限りで10%を適用)ことを提案している。もし、これが実現した場合、海外に滞留している現地通貨建ての利益(約2.5兆ドルともいわれる)が、一気にドルに転換されることになる。一時的にドル高円安の流れが急速に強まることになろう。

こうした動きが顕在化するまで、ドル高円安は止まらないとの見方も可能だ。過去、ブッシュ(ジョージ・ウォーカー・ブッシュ(息子))政権下での本国投資法では約3000憶ドルの海外滞留資金が米国に還流、2005年のドル高(安値101.69円→高値121.40円)を演出した。

もちろん保護主義懸念や、ドル高けん制発言、低下傾向を示す支持率(2月中旬時点の米ギャラップ調査では、支持率38%、不支持率56%)など懸念する材料は多い。だが、大統領に対する期待感が残っている以上、ドル安円高には進みにくく、ドル円は112円台から114円台でのモミ合い相場が続く可能性が高い、と考える。

今後、トランプ米大統領は、2月28日の上下両院合同会議で、議会向けの演説を行う予定だ。これは、政治や外交、経済などの基本政策を説明する一般教書演説に代わるもので、ここで上記の政策に対するコメントが出る可能性もある。閣僚人事など政権運営に対する不透明感が浮上しているなか、こうした懸念を払拭できるだけの演説となるか、注目だ。

マーケットの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナショック、企業の針路
  • コロナショックの大波紋
  • 日本野球の今そこにある危機
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
コロナ戦争は国家総力戦に<br>迫り来る「感染爆発」

東京のロックダウン、病床の不足……。新型コロナウイルスと戦う日本の国家体制を整理し、最前線の医療現場を支える根拠法を踏まえて詳解しました。経済対策はリーマンショック時を上回る60兆円超が見込まれています。