乙武洋匡「自分をようやく理解してもらえた」 中川淳一郎と語る「不寛容すぎる社会」の実像

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乙武:私があれだけネットでたたかれる理由と、はるかぜちゃんがたたかれる理由って、結構近いのかなと思っています。共に、もともと人々が無意識的に「自分より下」だと見ていたはずの存在なんです。

中川:そうか、彼女がツイッターを始めたときって、まだ11歳とか、もっと小さかったのかもしれない。

乙武:はい。小学生が自分よりも頭が切れて、正論を言うって、たぶんある程度自分に余裕があったり、自己肯定感があったりする方は、「あ、すごい利発なお子さんがいるな。優秀な小学生がいるんだな」と肯定的にとらえられると思うんですよ。ところが、自分自身に余裕がなかったり、自己肯定感がなかったりすると、たぶんそれが「むかつく、偉そう、生意気」と映るんだと思うんです。

それと同じで、障害者というのは、今までの社会では、弱者であり、自分よりも下の存在であり、保護されるべき存在だったわけですよね。その人間が、著名になり、影響力や発言力を持つ存在になる。見下していたものが強者になった違和感や戸惑いみたいなものが、「むかつく、生意気だ」との気持ちにさせる。だからこそ、そいつがこけたことで、「しめた! ここだ!」と一気に反攻に回った部分もあるのかなと。

中川:蓮舫さんの二重国籍の話があそこまでたたかれたのも、同じ構図なんですかね。台湾から帰化した結果、国籍が両方あったという話です。ただ、ネットの一部の人は、「民進党っていうのは、中華に日本を売ろうとしている売国政党だ」みたいな言い方があって。そこについに帰化軸が入ってしまった時点で、なんか見下した視線が生まれた。

乙武:蓮舫さんの場合は、やっぱり政治的、思想的な問題が加わってしまうので、ちょっと、はるかぜちゃんや私の文脈とは、異なる部分もあるかもしれない。でも根本的な問題でいうと、そもそも蓮舫さんは「女性」であるという部分が大きいのかなと。

中川:そうか、そうか。

乙武:男性は女性の立場を下に見ていた時代が、長く続いていたと思うんですよね。だから、蓮舫さんのように切れ味鋭く、強い物言いをする女性は生意気だと思われる風潮が、まだこの平成になった世の中でも、あると思うんですよ。でも、今回の騒動までは彼女の言うことがわりと正論だと感じる人が多かったからこそ、生意気だと思いながらも、なかなか反論できずにいた。だからこそ、ほころびを見つけたときに、「しめた、今だ」というのが、一気に吹き出たのかなと。

「障害者のくせに不倫なんかしやがって」

中川:だから、今のはるかぜちゃんや乙武さんの話でいうと、それを的確に表すのはジャイアンの言葉かなと。「あいつ、のび太のくせに生意気だ」っていう、あの威圧感。やっぱり藤子不二雄さんって、いろいろ本質を突く人だなと思うんですよ。

(一同笑う)

乙武:まさに今の「のび太のくせに生意気だ」の写しのような批判が、ツイッターにも多く寄せられましたよ。「障害者のくせに不倫なんかしやがって」って。

河崎:いかに差別意識が人々の根底に流れているのかを感じますね。

河崎 環 フリーライター、コラムニスト

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かわさき たまき / Tamaki Kawasaki

1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭高校から親の転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆をつづけている。子どもは、長女、長男の2人。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)。

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