「上野公園には、もうひとつホールが必要だ」 春の上野を一変させた男の次なる野望とは?

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――この時期は上野公園は中国人の観光客でもにぎわいます。

桜の季節ですからアジアからも多くの団体客が来ます。花見だけでなくクラシックを楽しみたい方もいるでしょう。その場でぱっと当日券を買えるように、中国語の案内も用意しています。

――今後の課題として、演奏会場を増やしたい、とも。

それほど演奏の機会がないバロックオペラをやりたい。そのためには800人くらい入るホールが必要なのに、ちょうどいいサイズのホールがない。バロックオペラは演奏時間が長いし、退屈だし、という評価をされていますが、そうではない。非常に魅力的なものです。演奏される場所を作りたい、というのが夢です。

――ちょうどいい場所はありますか。

今もう僕自身は貧乏になったから、なかなか難しい。でも、上野公園の中に、ぜひホールを作りたいと思っています。東京文化会館の裏にある「正岡子規記念球場」を潰せば、そこに面白いホールを作れるのではないかと思っています。もちろん野球発祥の地としての意味はあるのでしょうが、それこそ記念碑をひとつ建てればよいのではないか、と。

実は上野には大規模なコンサートができるホールは東京文化会館しかない。東京芸術大学の奏楽堂もありますが、学校の施設ですし受験シーズンは何かと難しい。現状では上野で集中的に音楽イベントをやるには限界がある。もう少し施設が整えばやれることは大きく広がります。

野外コンサートもやりたい

――上野公園のオープンスペースを活用すれば大規模な野外コンサートができそうです。

東京国立博物館前の噴水広場(写真:ジャバ/PIXTA)

いつか東京国立博物館の敷地内にある階段のところでオペラをやりたいと思っています。

ヨーロッパでは野外で行うオープンコンサートは定着している。うまく半透明の屋根をつけて、左右に大型のビジョンで映し出せば、公園に来た人たちみんなが見られるようになります。噴水広場あたりからのんびり見ると楽しいと思います。ただ3月はとっても寒い日が多い。凍えちゃう。時期を変えないとできません。

オープンコンサートということでいえば、上野駅の構内など公共スペースで大規模なフラッシュモブ(街中に溶け込んでいるパフォーマー達が突然演奏や踊りなどを行うサプライズイベント)をやりたい。2013年にはJR上野駅構内で開幕記念イベントとしてヴィヴァルディの「春」をやりましたが、小規模すぎてフラッシュモブとはいえない。本当はカール・オルフの世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」をやりたかった。ところが安全上問題がある、ということで難しかったようです。

さっき若い子たちが音楽離れをしているという話をしましたが、生の演奏に触れる機会が少ないんだから当然です。演奏家は、ホールの中だけではなく、もっと外に出て積極的にパフォーマンスをみせていったほうがいい。そんなことも考えているんです。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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