楽天三木谷氏、連続減益でも「自信」語る理由 海外事業で再び「減損」、ただ明るい兆しも

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軟調に見える海外事業だが、三木谷浩史会長兼社長は決算説明会で「(海外でも)いよいよ本格的に利益が上がってくる段階になってきた」と、むしろ明るい表情を見せた。

実際、楽天のグローバルにおける流通総額は拡大し、2016年は10兆7000億円(前年比18%増)に達した。中でも好調なのが、米国でEC支援事業を手掛けるEbates(イーベイツ)だ。同社が展開するのは、2600以上のECサイトと提携する会員制キャッシュバックサイト。ユーザーはイーベイツを経由して各ECサイトで買い物すると、最大で十数%のキャッシュバックを受けられる。同時に、イーベイツにもECサイト側からキックバックがもたらされる仕組みだ。

ECのプレーヤーが増え競争が激化するほど、各サイトは顧客との接点を開拓するのが難しくなる。そんな中、米国では、イーベイツのようにわかりやすい消費者メリットを訴求するポータルがより重宝されるようになった。現に衣料品、化粧品といったメーカーのECサイトはもちろん、アマゾンなどの巨大サイトも集客のためにイーベイツを利用している。海外関連ではほかにも、フランスとドイツでマーケットプレイス型(サイトに複数の企業が商品を出品する形)のEC事業が徐々に拡大している。

海外で楽天経済圏を作れるのか?

2016年夏に英国とスペインから撤退するなど、海外事業で大ナタを振るった同社だが、「4カ国(米国、フランス、ドイツ、台湾)に経営資源を集中したことで、大変いい効果が出てきている」(三木谷会長)。

今年からはスペインのFCバルセロナとのグローバルスポンサー契約も始まる(契約料は年間5500万ユーロ)。「楽天が世界で上位にランクされるようなブランドになることで、(イーベイツやヴィキなど)今までバラバラに存在していた海外事業を楽天ブランド化し、会員エコシステムを作りたい」(三木谷会長)。海外でも、日本のようにECやカード、証券、モバイルなどさまざまなサービスが結び付く「楽天経済圏」のような形を構想しているようだ。

海外で明るい兆しが出てきたとはいえ、順風満帆な側面ばかりではない。主力事業である国内EC事業に目を転じれば、ポイント関連の費用がかさみ営業利益が前年を大きく割り込むなど、2017年に持ち越した課題もある。減損を回避し、復活を果たすことができるのか。まさに勝負どころだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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