「メモリ特需」で日本の製造業は大復活する 東芝の大逆転はあるか?半導体新技術の実力
ここで重要なのは、サーバーにある記憶媒体は何かということだ。ほんの1~2年前まで、その9割以上はハードディスクだった。ハードディスクの世界最大手はアメリカのウエスタンデジタルで、東芝とのかかわりが深い。東芝はかつてアメリカのサンディスクと共同出資でフラッシュメモリを製造していたが、同社が2015年にウエスタンデジタルに買収されたため、必然的に関係が生まれた。ウエスタンデジタルに続くのが、日立や富士通、IBMなど。さらにヒューレット・パッカード(HP)も、サーバー需要の急増を見込んで力を入れている。
しかし、そのHPから、少し前にたいへん興味深い話を聞いた。ここ1年ほどサーバー製造の増強を図ってきたが、そのうちハードディスクの製造が占める割合は20%しかない。40%はフラッシュメモリを搭載したSSD、残りの40%もSSDとハードディスクのハイブリッドの製品であるという。同社は2020年時点のデータセンターについて、現在のハードディスクからすべてフラッシュメモリに置き換わると予測している。それを見据えて増強しているわけだ。
筆者は驚いて日立や富士通にも問い合わせてみたところ、HPと同じ答えが返ってきた。やはり現在のハードディスクは姿を消し、100%フラッシュメモリをコアとするSSDになるという。各社とも、そのための生産体制を整えているところらしい。
現在、フラッシュメモリのマーケットはたかだか3兆~4兆円にすぎない。半導体のマーケット全体が40兆円ほどだから、1割にも満たないわけだ。デジカメ、スマホなどで使われているフラッシュメモリカードが最大の用途だから、当然といえば当然だろう。
もともとハードディスクは丈夫で寿命も長く、しかも安価だ。それに対してフラッシュメモリは、ハードディスクと比べて同容量で価格が6倍ほど高い。だから現状において、フラッシュメモリの出番は限られていた。まして、ハードディスクから置き換わるなど考えられなかったのである。
ただし、フラッシュメモリにはハードディスクより圧倒的に優れている点が1つだけある。処理能力の速さで、その差はおよそ10倍もある。ということは、その演算能力をコストで割ればフラッシュメモリに軍配が上がることになる。HPなど各社はコストよりスピードを重視して、フラッシュメモリに傾注しているわけだ。
東芝の半導体製造技術は世界一
現在のところ、フラッシュメモリのマーケットはほぼ東芝とサムスンによる一騎打ちの状態になっているが、当初はフラッシュメモリといえば東芝の独壇場だった。ところが、例によってサムスンがコピー製品を作って追随し、2~3年前には東芝を抜いて圧倒的トップの地位を確立した。
そこから東芝も巻き返し、現在は連合を組むウエスタンデジタルと合わせれば、サムスンを抜いてトップに踊り出ている。NAND型フラッシュメモリの世界シェアで見ればサムスンが約33%、東芝・ウエスタンデジタル連合が約36%(東芝は21%、ウエスタンデジタルは15.4%)といったところだ。つまり、この2社で約7割を占めているわけだ。
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