「シエンタ」と「フリード」が接戦を続ける理由 トヨタとホンダの小型ミニバンは何が違うか

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フリードとシエンタでは、3列目シートの格納方法が異なる。シエンタが2列目下に格納するのに対し、フリードはミニバンでよく見掛ける、両サイドにはね上げる方式となる。この違いが、ハイブリッド4WDを生み出せることができた理由のひとつだと思っている。

(左)シエンタのシート配置、(右)フリードの3列目格納

福祉車両のラインナップが多いのもフリードの特徴だ。シエンタが助手席回転チルトシート車と車いす仕様車の2タイプで、ハイブリッドが選べるのは前者のみなのに対し、フリードは助手席あるいは2列目左サイドの座席が車外にせり出すリフトアップシートとしており、車いす仕様車とサイド・リフトアップ・シート車でハイブリッドが選べる。

(左)シエンタの車いす仕様車、(右)フリードのサイドリフトアップ車

フリードの加速は小気味よく、シエンタは滑らか

ハイブリッド車同士で走りを比較すると、メカニズムの違いもあり、フリードの加速は小気味よく、シエンタは滑らかという印象だ。シエンタの乗り心地はまろやかであり、フリードは高速道路でも正確なハンドリングを示す。街中を快適に移動するならシエンタ、運転を楽しむならフリードという違いを感じた。 

ホンダセンシング操舵支援

最近のトレンドとなっている予防安全装備もフリードが上だ。シエンタはトヨタセーフティセンスCを設定しており、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報システム、オートマチックハイビームを備えるが、フリードに用意されるホンダセンシングは前車に合わせて速度調節するアダプティブ・クルーズ・コントロール、車線に合わせた操舵支援も備わる。

昨年9月に登場した現行フリードは、翌月からシエンタと同等の販売台数を記録している。10月から12月までのデータを見ると、いずれも4位がシエンタ、5位がフリードとなっている。その差は10月が1625台、11月が1163台、12月が770台、先月が79台と、少しずつ縮まってきている。

販売店の数で見れば、トヨタの全販売店で扱うシエンタのほうが有利だ。そんな中でフリードが健闘しているのは、ハイブリッド4WDの設定、福祉車両や予防安全装備の充実が後押しとなっているのかもしれない。

もちろん販売台数が多いほうがいいクルマだというつもりはない。デザインにしても走りにしても、2台は独自の個性を持ち、甲乙つけがたい関係にあるからだ。両車種ともにその個性を伸ばす形で進化していってほしい。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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