内容薄でも「日米首脳会談」が超重要な理由 安倍首相のミッションは小さくない

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投資銀行家だけでなく、米政府でもキャリアを積んできたジャスター氏は、トランプ大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏の任務を引き継ぐ格好となる。ちなみに、ジャスター氏は大統領選直後の安倍首相によるトランプ大統領訪問をアレンジした人物でもある。今回も、在米日本大使館はまずクシュナー氏に連絡を取ったようだが、クシュナー氏はNSCが今回は主導権を握ることを希望し、最終的にはジャスター氏がこの役割を引き受けた。

さて、環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱など、トランプ大統領がすでに積極的に保護主義の方向へ動いているなか、経済協力において日本は、トランプ大統領が「米国を再び偉大にする」のに協力するというスタンスを保つのがいいのかもしれない。

つまり、安倍首相はワシントンを訪れるにあたって、新たな(あるいはさらなる)2国間における経済協力によって、米国のインフラやテクノロジーの発展を促し、米国での雇用を新たに70万人増やすことができると示すのではないか。トランプ大統領が安倍首相の案を気に入れば、ただちにツイートする可能性もある。

安倍首相の提案が「筋違い」になる可能性も

もっとも、これは安倍首相が示す日本による対米投資のメリットが、必ずしもトランプ大統領が描いている米国の成功とは一致しない可能性もあることから、安倍政権にとっては薄氷を踏むような戦略でもある。たとえば、米国にある日本の自動車メーカーで雇用が増えるというのと、米フォードや米ゼネラルモーターズ(GM)のシェアが、日本市場で増えるという話はまったく異なる。トランプ大統領は、前者だけでなく、後者も含めて「米国の成功」とみなしている。これは、たとえば高速鉄道など日本による米国へのインフラ投資に関しても同じことがいえるだろう。

日本の政府関係者によると、今回安倍首相は、トランプ大統領を刺激しないためにもTPPに触れることはなさそう。ただし、安倍首相としては、日本と米国がオープンかつ透明性が高く、さらに公正な世界貿易の最前線に立つべきとの考えは示したいようだ。さらには、2国間協定の先には、多国間協定もあるとの考えを伝える可能性もあるという。

安倍首相はまた、新たな日米経済協力のフレームワーク作りに向けて、マイク・ペンス副大統領と、麻生太郎副総理兼財務相の関与を強めることによって、トランプ政権における保護主義的な貿易政策を少しでも緩和したい考えがあるようだ。

トランプ政権の貿易政策が固まっていないことを考えると、今回の首脳会談で予想外のことが起きる可能性は低いだろう。しかし、今後の日米関係においてトランプ大統領と「パーソナルな関係」を築くにいたらなくとも、日米同盟の利点を確認することや、経済政策の基本的な考え方を共有するという点で重要な場になることは間違いない。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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