留学を仕事に生かせる人と生かせない人の差 企業の本音を知って就・転職を有利にしよう
さて、では留学生たちは帰国するまでにどんな行動をし、企業が求める能力をつけてくればいいのだろうか。
「コミュニケーション力」が伸びたと回答した帰国者は、英語ではシンプルに伝えることが大事だとし、現地ではなるべく簡単に完結に心掛けて話すようにしたことから、自分の言いたいことを伝えられるようになった、と言っている。また、わからないことは恥ずかしがらずに質問し、相手を知ろうとする好奇心を大切にしたとも言う。
「実行力」が向上した帰国者は、仕事を辞めてワーキングホリデーに行くという決断の時点ですでに「失敗してもいいからとりあえずやってみようという考え方が当たり前」になったと言う。現地では語学力向上のために日本人のいないレストランや以前から興味のあった場所にも足を運んでいる。
帰国後に満足のいく就職を果たした人たちに共通しているのは、日本では経験できないような活動や勉強を探し、できるだけチャレンジするという行動、そしてそれらの活動記録をつけ、成果を残したことだ。日本人とのネットワークも大切にし、現地でのより充実した体験のための情報収集や帰国後も続く交流に生かしている。彼らは現地での経験と成果を言語化し、就職活動における自己PRや応募書類作成へ的確に落とし込んでいる。
一方で、帰国後に就職で苦戦を強いられた人たちの行動も知っておきたい。「やりたい仕事や働く条件にこだわりすぎてしまう」「自己理解ができていない」など数々の要因があるなか、注目したいのが「語学にこだわりすぎる」という点だ。
先述の「企業が採用時に重視する能力」でわかるとおり、企業が求める能力・資質の上位回答のなかに語学力は入っていない。「職種別の採用意向ランキング」においては4位に通訳・翻訳業務が入っているが、通訳・翻訳をこなせるレベルの語学力はかなり高いレベルを要求される。「せっかく海外で学び語学力も伸びたのだから、語学力を生かした仕事がしたい」という帰国者は少なくないが、あくまでも語学は能力を発揮するツールの1つであることを認識したほうがよさそうだ。就職活動の時点ではあくまでも考え方を柔軟に持ち、就職先企業が将来グローバル展開するときに手を挙げよう、場合によっては自ら海外事業を提案し引っ張っていこう、そんな意識を持つのもいいだろう。
帰国者が守るべき「規律性」「協調性」
留学帰国者の就職には課題もある。企業は海外体験者とそうでない者との能力比較において、海外体験者は「規律性」「協調性」が不足していると回答している。海外生活をしていると、時間にルーズな海外文化に慣れたり、ルールを順守しなくなったりするのかもしれない。日本の企業文化のなかでそれは許されないばかりか、自らのチャンスを潰してしまうことにつながると認識したほうがよさそうだ。「協調性」の不足についていえば、一方で企業は「『主体性』のある人材は欲しい」と回答している。ある意味で社内の異端児となる留学帰国者。このバランスは、採用企業の悩みどころだろう。
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