「鳥貴族をつくった男」の知られざる悪戦苦闘 脱チェーン店理論で作りあげた儲けの仕組み

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大倉は一方では店舗運営改革のためにタッチパネル導入のテストを行っている。タッチパネル式のオーダーシステムを繁華街の多忙な店(70~130席)に順次導入し、ピークタイム時の営業人員を減らす方針だ。100席以上の大型店で従業員2人、中型店で1人減らすことが可能だ。といっても店舗当たりの正社員を減らすわけではなく、あくまでもピークタイム時の営業人員を減らし、効率を上げることが目的だ。タッチパネル導入によってできた余力を活用し、「もっと接客に力を注ぎたい」という。今期に100店舗をメドに導入する計画である。

大倉は低価格イタリアンレストランのサイゼリヤ、および日本マクドナルドをベンチマークしている。店舗運営では「QSC」(Q=クオリティ:品質、S=サービス:接客、C=クレンリネス:清潔・清掃)に加え「T」(T=タイム:提供時間のスピード化)を重視している。

鳥貴族はフードメニュー65品目、飲料メニュー75~80品目程度に絞り込み、効率経営を心掛けている。また、釜飯などの食事メニューも充実させ、若者から中高年、ファミリー層まで全世代を取り込もうとしている。

日常づかいできる店づくりが目標だ。最近ではロードサイド型の「鳥貴族&ファミレス」業態に挑戦。2016年11月の500店達成に続き、出店ペースを加速。2021年には1000店舗体制の構築を視野に入れる。

非効率でも串打ちはやめない

生産性の向上、効率経営の追求と言いながら大倉は、一方では店舗での串打ち(鶏肉やネギなど具材を串に刺すこと)を決してやめない。これをやめれば営業利益率は3~4%は上がると指摘されている。だが、大倉は「非効率でコストアップでも続けないと鳥貴族らしさが失われる。焼き鳥は串打ちという最後のひと手間を加えることで本当においしくなる」と絶対に妥協しない。大倉は「串打ちはチェーン店の脱チェーン店理論です」と苦笑する。

大倉は鳥貴族の厨房革新と店舗運営の情報革新によって生産性を高め、「280円均一」のビジネスモデルをさらに進化させようとしているのである。

(敬称略、第3回に続く)
 

中村 芳平 外食ジャーナリスト

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なかむら よしへい / Yoshihei Nakamura

1947年、群馬県生まれ。実家は「地酒の宿 中村屋」。早稲田大学卒。流通業界、編集プロダクション勤務、『週刊サンケイ』の契約記者などを経てフリーに。日刊ゲンダイの「語り部の経営者たち」にレギュラー執筆、ネット媒体「フードスタジアム」に「新・外食ウォーズ」、「ビジネスジャーナル」に「よくわかる外食戦争」などを連載。

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