「TPP交渉は、あっさり決着」と読む理由 吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット

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いや、筆者は別に外務省を責めるつもりはない。むしろファインプレーだと褒めてあげたいくらいだ。そもそも外交というものは、長期安定政権でないとうまくいくはずがない。だったら安倍内閣の選挙をアシストするのは、官僚としての当然の務めであろう。というよりも、この一事を見ても、今の霞が関が、永田町といかに好関係にあるかが、わかろうというものだ。

今までの通商交渉とTPPとの、決定的な違いとは?

問題はこのTPP交渉参加が、日本の国内政治や外交にこれからどんな影響をもたらすかである。正直言って、蓋を開けてみなければわからないことが多いのだが、「市場深読み」という当連載の趣旨からいって、ここは少し踏み込んだ予想を展開してみたい。

まず、今までの通商交渉とTPPには決定的な違いがあることを指摘しておこう。
今まで、ジュネーブでのWTO交渉などの場において、日本からは常に複数の代表者が参加していた。端的に言えば、外務省と経産省と農水省がそれぞれ別個に交渉を行っていた。それぞれの大臣に各省の官僚たちがくっついて、「大臣、ここは横になってでも認めないでくださいっ!」などとけしかけていたのである。もちろん、省庁間の横の連携などないに等しい。

他国の外交官からは、「この人たちは国内の調整ができないから、仕方がないよねえ」と冷ややかな目で見られていた。まさに省あって国なし。陸軍と海軍が内輪で喧嘩しながらアメリカと戦っていた、という太平洋戦争の頃とあんまり変わってはいないのである。

こんな感じだから、日本はマルチ(多国間)の交渉はあんまり得意ではない。逆に日米自動車交渉のように、個別の省が単独で対応できるバイ(二国間)の交渉では、現場が張り切って意外な粘り腰を発揮することもある。善くも悪くも、これが日本の通商スタイルというものであった。

ところがTPPに関しては、交渉担当者が一本化されている。日本で言えば、甘利明TPP担当国務大臣と鶴岡公二TPP政府対策本部主席交渉官が司令塔となる。各省庁は、一本化したラインの下で省益を主張するしかない。これは日本外交としては、画期的なことと言えるのではないか。さらに言うと、このままTPP交渉は向こう1年くらいは続くであろう。正直なところ、年内妥結という目標を信じている関係者は少ない。アメリカのオバマ大統領は、来年秋には中間選挙を抱えているので、その前にはTPPを妥結させて成果としてアピールしたいところ。ゆえに来年夏がゴール、というのが交渉担当者たちの相場勘である。

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