「鳥貴族」がワタミをついに追い抜いた理由

全品280円均一の焼き鳥屋は何が強いのか

当時、鳥貴族はまだ大阪・関西方面で50店舗足らず展開するだけの小さな地域チェーンで、東京ではまったく無名だったが、大倉には自信があった。2002年に国産新鮮鶏肉を使い、普通の3~4倍もある「むね・もも貴族焼」(ネギ付き1本90グラム=1人前2本)」を開発。1986年に「250円均一」でスタートしてから16年間かけて、鳥貴族の「全品280円均一」のビジネスモデルを完成させてきたからだ。

創業から2002年ごろまでは大阪の私鉄沿線の2、3流立地の低家賃の場所に出店してきたが、2003年に大阪を代表する繁華街の道頓堀の飲食ビルの空中階に「全品280円均一じゃんぼ焼鳥 鳥貴族道頓堀店」を開店し、大繁盛させた。大倉はこの大成功をバネに、東京進出を決断。鳥貴族の「全品280円均一」のビジネスモデルは、「東京でも通用する」と確信していた。

リーマンショック後の不況が追い風に

東京進出後の大倉にとって大きな追い風になったのが2008年9月に起こったリーマンショック後の景気悪化であった。2009年度には居酒屋・ビアホール市場の規模は1兆0187億円でピーク時の30%まで縮小した。企業の交際費は削られ、小遣いが減ったビジネスパーソンは消費を控えるようになった。ワタミなど客単価3000~3500円もする総合型居酒屋チェーンに行く回数は減り、かわって客単価の安い鳥貴族に切り替えるビジネスパーソンが増えた。リーマンショック後の不況が、鳥貴族の低価格・高品質の価値を気づかせ、開店すると行列ができるようになったのである。

大倉は店舗開発を推進するうえで一般的なFC方式ではなく、「のれん分け」を基本にした「TCC鳥貴族カムレードチェーン」方式を構築してきた。元社員、友人の14人を独立オーナーとして育成し、「本社直営部門&カムレード加盟店」が一体となって店舗開発を行うシステムだ。2016年11月までに開店した502店舗のうち、直営が292店舖、カムレードチェーンが210店舗である。

カムレード加盟店の1店舗の開店費用は加盟金が50万円、毎月のロイヤルティが5万円かかるだけだ。「280円均一」は顧客本位の薄利多売のビジネスモデルであり、一般的なFC加盟店と比べると加盟金、ロイヤルティなどは格安だ。大倉は加盟店が出店数を増やし、繁盛できるように精いっぱい配慮している。ここに大倉とカムレード加盟店オーナーとの契約を超えた“同志的な絆”が存在する。これが鳥貴族の店舗開発力の強さの源泉である。

鳥貴族の大倉は、「今年度から年間100店ペースで出店し、2021年7月期には1000店舗を達成する」と公言している。単一業態で1000店舗以上を実現してきたファストフード業界の人材を数人スカウトし、店舗開発などを任せている。

鳥貴族はこれまで主要駅前の飲食ビルの空中階や地下に出店してきたが、これからは500店目となった自由が丘北口店のような住宅街の駅前や幹線道路沿いにも広げる。客層が家族連れや中高年齢層にも広がってきたことに対応する狙いだ。一般的に出店計画は未達成で終わり、先送りされるケースが多いが、鳥貴族の場合、達成する可能性は高いと筆者は見ている。

(敬称略、第2回に続く)

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