新市場でアクセル 日系トラックの危機感 激しさを増す、陣取り合戦

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三つどもえのシェア争い

ただ、このドル箱の東南アジア市場で競争が激しくなっている。

インドネシアでは、大中型トラックで日野が、小型トラックで三菱ふそうが、それぞれ5割以上のシェアを握っている。その市場を、これまでタイを主戦場としてきたいすゞが本格的に切り崩しにかかる。いすゞは、インドネシアを新興国向けトラックの生産拠点と位置づけ、現地工場の増強に着手した。先行する2社といすゞの三つどもえのシェア争いが過熱していくことは確実だ。

日野の市橋保彦社長は「今年に入ってから、当社における最大市場のインドネシアで販売の伸びが鈍化している。販売がマイナスということではないが、決して楽観できる状況ではない」と、気を引き締める。

さらに無視できないのが、中国メーカーの台頭だ。

かつてベトナムでは、日野が大中型トラックで5割以上のシェアを握っていた。ところが、07年に低価格の中国製トラックが流入し始めたことで09年以降はシェアが急落。現在では2割を切っている。品質は劣るが、日野の半値近い安値の中国製トラックに、ベトナムの消費者が飛びついたからだ。

ベトナムより経済が発展しているインドネシア、タイ、マレーシアでは現状、中国メーカーの存在感は高くはない。とはいえ今後、中国メーカーの品質やアフターサービスが改善していけば、ベトナムと同じことが起きかねない。実際、「インドネシアでも、中国車が競合となる商談が少しずつ増えている」(日系商用車メーカー幹部)。

「今のうちにさまざまな市場に布石を打つことが、長期的な成長の実現につながる」(日野の市橋社長)。東南アジアにあぐらをかき続ければ、さらなる成長は望めない。日系トラックメーカーの海外市場開拓は新たなステージに移っている。

週刊東洋経済2013年7月20日号

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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