キヤノンは「累計1兆円買収」で変身できるか 「新事業」は、カメラに並ぶ売り上げ規模に

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TMSCの買収完了を受け、2016年12月にキヤノンの御手洗冨士夫会長(左)が会見した(撮影:尾形文繁)

増益の牽引役として同社が期待しているのは、2017年度から通年で業績に寄与するTMSCだ。同社の業績貢献を、キヤノンは無形固定資産償却後ベースで営業益100億~150億円と想定している。また2016年に11%の増収を達成したアクシスの監視カメラの続伸が見込まれるほか、FPD露光装置や有機EL蒸着装置なども有機EL市場の拡大を背景に伸びる。これら「産業機器その他事業」の営業利益は、2016年度比2.8倍の208億円を計画。2015年度に同事業は130億円の赤字だったことを考えると、一定の買収効果は得られているとも考えられる。

TMSCの業績予想はまだ精査中

だがTMSCの見通しについては、不透明な点も残る。2015年3月期の同社の営業利益は177億円、開発費用がかかった2016年3月期の営業利益は82億円だった。2017年度は無形固定資産償却150億円を織り込んでおり、償却後ベースの営業益を100億~150億円と想定しているということは、TMSC単体の営業益は250億~300億円とキヤノンは考えているということだ。

なぜ、TMSCの収益力はそこまで上がるのか。その根拠について、キヤノンはひとまず同社から上がってきた数字を採用しており、その数字について「まだ精査していない段階」と田中CFOは強調した。

TMSCは、CTや超音波診断機器など医療機器で安定的に収益を稼ぐ東芝グループの"優等生"だった。収益貢献には期待が持てるが、はたしてもくろみどおりとなるか。その結果は、今期のキヤノン全体の業績も左右することになりそうだ。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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