ソニーが豪語、「2017年度利益倍増」の現実味 巨額減損でウミを出し切り、過去最高益圏へ

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2017年度は震災影響や減損など、今期計上した一過性の費用がすべて消えるため、それらをすべて足し合わせた約2000億円分の増益はすでに約束されているといえる。つまり、今期計画通り営業利益2400億円で着地すれば、来期の営業利益4000億円超が見えてくる。

そうなれば経営陣の関心は、目標とする営業利益5000億円の達成に向け、残りの数百億円をどこで伸ばすかということになるだろう。

成長のカギを握る2つの事業

発売から3カ月超が経った「プレイステーションVR」。販売は順調だ(撮影:梅谷秀司)

ソニーが来期に向けた実質的な成長の牽引役として期待しているのが、半導体事業とゲーム事業だ。

半導体事業はカメラ用部品であるイメージセンサーの売り上げが過半を占めており、納品している顧客の最終製品の売れ行きに左右される構造になっている。

主要顧客の米アップルが1月31日に発表した2016年10~12月期の決算では、iPhoneの販売台数が前年同期比5%増となり、第二四半期の売上高予想を同2~6%増の515億ドルから535億ドルと公表。かつてのような勢いはないにしても、着実な成長が見込める。

アップルだけでなく、中国のスマホメーカー向けにも販売が伸びている。足元の勢いはソニーにとっても想定以上で、今回の決算発表では半導体事業における今期の業績予想を上方修正した。来期も底堅く推移しそうだ。

ゲーム事業は「プレイステーション4(PS4)」の好調な販売が続いているほか、仮想現実(VR)のヘッドセットでゲームが遊べる「プレイステーションVR」(2016年10月発売)も順調に推移しており、VRの売り上げが通期で貢献する来期はさらなる伸びが期待できる。

懸念材料があるとすれば、足元の円安だ。国内で製造し輸出する半導体事業には追い風となるものの、テレビなど海外生産品のコストが上がるため、「ソニーの事業構造全体としては円安ドル高でマイナスの影響を受ける」(吉田CFO)。

2017年度、狙い通りのV字回復となるか。「ソニー完全復活」へ、もう想定外は許されない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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