スズキ「ワゴンR」は再び王座を奪還できるか 4年半ぶり全面刷新、軽自動車トップを狙う

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好調なN-BOXとタントはともに、ワゴンよりもさらに背が高い170センチメートル以上の車高を持つ「スーパーハイトワゴン」と呼ばれるカテゴリーの車だ。ワゴンRは165センチのため、分類は異なる。一般的に車高を高くしようすると車体が重くなるうえ、空気抵抗も受けやすく、燃費改善が難しくなる。だが子どもが立って着替えられるなど軽自動車とは思えない広い室内空間が特長で、ファミリー層を中心に需要が高まっている。

先鞭をつけたのが、スズキのライバルであるダイハツのタントだった。さらに軽自動車の再強化を掲げたホンダがN-BOXを投入して大ヒットとなった。スズキもこの2社を追うようにスーパーハイトワゴンの「スペーシア」を投入したが、16年のランキングは8位にとどまっている。

新型ワゴンRで再び首位を取りに行く

N-BOXやタントに対するワゴンRの弱みを認めた上で、新型車には自信を見せた鈴木俊宏社長(写真:尾形文繁)

鈴木社長は「スズキの軽自動車に魅力があったかどうかを考えると、スペーシア、ワゴンRでは少し他社に比べると遅れていた」としたうえで、「ワゴンRが軽ワゴンのジャンルを築いたが、その後、ハイト系のワゴンが出ていろんな選択肢が増える時代の流れの中で、1位を取れなくなったと思う」と反省する。

そんな中で、今回発売するワゴンRは大きな意味を持つ。販売目標台数は月間1万6000台。デザインの異なる3タイプが用意されており、「それぞれ月5000台は売れてほしい。理想論ではあるが、意気込みがこういう数字になった」と鈴木社長の鼻息は荒い。「車名別で1位を取るかどうかは別」と明言を避けたが、単純に計算すると年間で19万台を超える。これは昨年のN-BOXの販売台数を上回っており、軽自動車で年間1位の獲得が見えてくる。

その先に見据えるのが打倒ダイハツだ。2006年度に軽シェア首位を奪われて以来2位に甘んじるスズキだが、ワゴンRが復活すれば追撃の勢いは増すだろう。実際、鈴木社長は会見で「競争なので1位を狙いにいくことを念頭にしている。総合力でやっていく」と断言した。

スズキは登録車では「イグニス」などのコンパクトカーが好調で、国内での登録車販売台数は過去最高の10万台に達した。次なる目標が軽の底上げだ。

昨年はダイハツがトヨタ自動車の完全子会社となり、スズキもトヨタと業務提携することで合意し、ライバル同士が同じトヨタの傘に入った。鈴木社長はダイハツについて「お互いに切磋琢磨する関係になる」としているが、1位にかける思いは強いはずだ。ワゴンRはその牽引役となることができるか。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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