トランプ大統領は「イスラエル中心主義者」だ

就任演説での聖書からの引用に隠された意味

【都に上る歌。ダビデの詩。】
見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び。
かぐわしい油が頭に注がれ、ひげに滴(したた)り
衣の襟に垂れるアロンのひげに滴り
ヘルモンにおく露のように
シオンの山々に滴り落ちる。
シオンで、主は布告された
祝福と、とこしえの命を。

 

133編は、紀元前6世紀にバビロン捕囚から解放されたユダヤ人の喜びの詩となっている。ヘルモンとは、イスラエルとシリア、レバノンの3カ国にまたがる標高2814メートルのヘルモン山のこと。一方、シオンの山々とは、古代ユダヤ王国の英雄、ダビデ王の墓があるエルサレム市内のシオンの丘のことだ。つまり、ヘルモン山に降ってくる露のように、このシオンの丘にも露が滴り落ちるという喜びにあふれた情景を歌っている。

この詩編について、同志社大学大学院神学研究科を修了した佐藤氏は1月26日、新党大地主催の月例定例会で、次のように指摘した。

「この133編という詩は、玄人が聞いたらみんなわかる詩だ。何かといえば、イスラエル中心主義の話になっている」「要するにユダヤ教とキリスト教でヤーヴェ(ユダヤ教の唯一神)に基づく世界支配は、シオン、つまり、イスラエルから広められると言っている」「ダビデ王を理想としたメシアニズム(救世主信仰)を典型的に示した内容だ」

なぜ旧約聖書から引用したのか

さらに佐藤氏は、トランプ大統領が、キリスト教徒のみが聖書とする『新約聖書』ではなく、キリスト教徒とユダヤ教徒の両者が信仰の拠り所とする『旧約聖書』をあえて引用したことに注目する。旧約聖書を意図的に引用することで、「イスラエルと全世界のユダヤ人に対し、『私はあなたたちと価値観を共有します。ユダヤ人の味方です』というメッセージを送った」と佐藤氏は分析、「トランプ政権の外交は、親イスラエルを基調とすることになる」と述べた。

確かに、トランプ大統領は、テルアビブの米国大使館をイスラエルが「首都」と主張するエルサレムに移転する計画を打ち出すなど、既に極端なイスラエル寄りの姿勢を表明している。

エルサレムはユダヤ教徒、イスラム教徒、そしてキリスト教徒にとっても聖地だ。移転が実現されれば、パレスチナや隣国ヨルダンなどアラブ諸国の強い反発を招き、中東の一層の不安定化につながる。最悪の場合には、イスラエル対アラブ諸国の第5次中東戦争の引き金になりかねない。

米国では、ユダヤロビーの影響の下、プロテスタント原理主義とユダヤ教が連携したいわゆる「クリスチャンシオニズム」(キリスト教シオニズム)がかねてから根強い。2001年の米同時多発テロ後、アフガン戦争やイラク戦争を開始したブッシュ政権にも、新保守派(ネオコンサバティブ)と呼ばれる集団に属するクリスチャンシオニズムの人々が加わっていた。しかし、長年滞っていた米国大使館のエルサレム移転計画を主張するトランプ政権の外交政策は、そのブッシュ政権よりもさらに「イスラエル寄り」「反イスラム」になる可能性が高い。

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