相次ぐ強敵、競争にさらされる「ドイツ鉄道」 同業他社の参入や長距離バス規制緩和・・・

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
主に在来線の優等列車として活躍するインターシティ(筆者撮影)

いわゆる航空業界や船舶で言うところの「ナショナルフラッグ」に位置するドイツ鉄道だが、同業他社のみならず、他の交通機関との競争にもさらされている。特に、2013年1月より市場自由化された、長距離路線バスの動向が気になるところだ。これまでドイツでは鉄道輸送を保護するため、長距離バス市場に規制が掛けられていたが、それが撤廃されたのだ。

2012年には約300万人だったとされる長距離バスの利用者数は、その後の新規参入企業の爆発的な増加により、2014年には1600万人に達したとされる。その影響もあってか、ドイツ鉄道長距離旅客部門の収益が大幅に落ち込んでいる。圧倒的な低価格が売りの長距離バスに、価格に敏感な若者が飛びついたことが大きな理由となっているようだ。また、価格の安いバスに対抗するため、割引運賃の設定を増やしたことも、収益悪化に拍車をかけた形となった。

もはや、価格だけでバスに対抗することは非常に困難なため、既存インフラを生かしたきめ細かいネットワークや、鉄道ならではのスピードとサービスなどで、長距離バスに対抗していくことが望まれる。

鉄道システム全体の見直しを

一方、近年のドイツ鉄道は遅延の発生が目立つようになったことが気になる。これまでドイツの鉄道といえば、ヨーロッパの中では時間の正確さが売りの1つでもあったはずだが、今では駅で遅延の文字を見ない日はないほど常態化している。

その理由としては、ターミナル駅周辺の線路構造がほかの列車へ影響を与えやすい点や、高度にネットワーク化されたが故に、ある一部で発生したわずかな遅延が波及し、先々まで遅延の影響を受けてしまう構造上の問題が指摘されている。今一度、システム全体を見回して、適切なダイヤへ組み直すなど、対策していくことが今後の課題と言えるのではないだろうか。

ヨーロッパ全体から見て、非常に規模の大きく、近代的な鉄道インフラを持つドイツだが、同時に自動車産業と高速道路網も発達しているのが特徴で、旅客輸送においては全体の約80%を道路交通が担っており、鉄道のシェアはわずか8%に過ぎない。ドイツ鉄道には、これまで構築してきた信頼性や安定性などを武器に、ドイツ国内のみならずヨーロッパの鉄道業界をリードする存在となることを期待したい。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事