相次ぐ強敵、競争にさらされる「ドイツ鉄道」 同業他社の参入や長距離バス規制緩和・・・
そのドイツ鉄道では、1991年に運行を開始した高速列車ICEが長距離輸送の主力となっている。ICEは年を経るごとに運行路線を拡大し、現在は主要都市の大半をカバーするネットワークへと成長した。車両は、運行開始時に製造されたICE1と、それほど需要の多くない路線用に編成を短縮し、設備も簡素化したICE2、最高速度を時速300キロメートル以上とし、周辺各国への乗り入れも考慮した「ICEの決定版」といえるICE3、そしてICE1・2の置き替え用として登場した次世代型車両ICE4の4車種からなる。
最新のICE4は、ICE1・2や在来線優等列車のインターシティの置き換えを目的としていることから、最高速度はICE1・2の通常速度と同じ時速250キロメートルに抑えられている(ICE1・2は遅延回復時、最高時速280キロメートルで走行することが可能だが、ICE4では高い加速力により、同じダイヤで運行することが可能となっている)。
最高速度を高めるには相応のコストが発生するため、ICE4は使用する路線を考慮して適切な速度上限を設定したといえる。ICEネットワークの拡大にともない、在来線の特急に相当するインターシティは今や完全にICEを補完する役割の列車となっており、ICE路線網から外れた地方路線や、ICEが通過する駅などの需要を担っている。
都市部や貨物では新規参入組が健闘
一方、都市圏の地域旅客輸送に関しては、オープンアクセス法施行によってドイツ鉄道への影響が生じている。地域旅客輸送はドイツ国内の各16州が管轄責任を負っており、競争入札によって事業者を決定、運行を委託する仕組みだ。前述の長距離輸送と異なるのは、鉄道事業者が各州と締結する契約によって一定額の収入が保証されている点で、民間事業者にとっても参入しやすい。
結果として、フランス系のトランスデヴやオランダ系のアベリオ、英国系のナショナル・エクスプレスなど、多くの外国資本系運行会社がドイツ国内都市圏輸送へ参入しており、2013年時点でドイツ鉄道以外の事業者のシェアは26.4%に達している。
また、物流においてもオープンアクセスにより多くの民間会社がドイツ国内の貨物事業へ参入している。貨物輸送の実績でも、ドイツ鉄道以外の事業者のシェアは2013年時点ですでに33.2%に達しており、その割合は年々増加傾向にある。
だが、ドイツ鉄道もただ新規参入業者にシェアを奪われているだけではない。失った収益分を補てんする目的から、2010年には鉄道・バスを各国で運行する英国系の会社アリーバを買収し、同ブランドで他国の交通事業へ進出を図っている。また、ドイツ鉄道貨物部門のDBシェンカーは、オープンアクセス法の施行によって他の事業者が参入してくることは避けられないと判断、逆に近隣諸国の鉄道貨物会社を買収することで、事業エリアをドイツ国内のみから欧州全体へと拡大した。
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