相次ぐ強敵、競争にさらされる「ドイツ鉄道」 同業他社の参入や長距離バス規制緩和・・・
ヨーロッパ域内各国の鉄道事業に大きな影響を与えたオープンアクセス法は、もちろんドイツ鉄道の業績にも少なからず影響を与えた。他国の企業を含む新規参入の事業者がドイツ国内で営業を始めたためだ。
だが、長距離輸送に関しては、すでにドイツ鉄道が多くの都市間できめ細かな列車運行を行なっていることから、新規参入事業者が新たな需要を掘り起こすことは非常に難しいと言わざるを得ない。
その一例として挙げられるのが、ハンブルク-ケルン間を結ぶハンブルク・ケルン・エクスプレス(HKX)だ。HKXは、2012年7月より運行を続けてきたが、乗客数の伸び悩みから年を経るごとに徐々に運行本数が減らされていき、2017年1月現在では、ついに金・土・日に各1往復ずつと、いつ廃止されてもおかしくない状況となった。
ハンブルク-ケルン間には、すでにドイツ鉄道が在来線特急に相当する「インターシティ(IC)」を運行しており、その本数も1時間に1本の頻度だ。いくらドイツ鉄道より安い運賃とはいえ、現在のような週末のみ運行というスタイルになる以前も1日数往復しか運行していなかったため、わざわざこの列車を選んで乗ろうと思う人は少なかっただろう。パターン化されて分かりやすいダイヤと、高頻度運転がドイツ鉄道の強みとなっている。
新たな挑戦者は成功するか?
このように新規事業者が参入しにくい環境の中、2016年12月から新たな運行会社「ロコモア(Locomore)」がベルリン-シュトゥットガルト間で運行を開始した。同社の代表者であるデレク・ラドウィグ(Derek Ladewig)氏は、HKXの設立にも関わっていた人物だが、米国投資家との戦略的方向性の違いから幹部数人と共に同社を離れ、ロコモアを新たに設立した。
ロコモアによる列車は、ベルリン-シュトゥットガルト間を1日1往復運転。途中でハノーファやフランクフルトなどの都市を経由するとはいえ、本数の少ない長距離列車が果たしてどれほどの集客を見込めるのかは未知数だが、早くも次のダイヤ改正では、ミュンヘンやケルン・ボン、ドイツ北部のビンツへ路線網を拡大する計画とのことだ。ドイツ鉄道が長距離輸送で強みを発揮する中、経営を無事に軌道に乗せることができるのかが注目される。
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