日本は世界第2位の「政府の隠れ資産」大国だ 活用次第で「債務削減+経済成長」が可能に

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実は、公的資産がその国のGDPのなかで占める割合を分析すると、日本は信頼できる統計のある国々の中で、世界第2位に位置している。その額は、問題視されている公的債務を上回り、GDPの2倍以上となっている。GDPの2倍以上の公的資産を持つ国は、日本のほかにノルウェー、ラトビア、チェコの3カ国しかない(IMFの2013年データより筆者ら推計)。

IMFの2013年データを基に筆者ら推計。統計の信頼度が低い国・地域は入っていない。グラフは主要国のみ

既得権益者がしまいこんでいる公的資産

本書では、その公的資産を活用して、経済成長を押し上げて福祉全体を改善するために、比較的痛みの少ない方法を提言している。

最初の課題は、公的資産がどこにどれだけ存在しており、どれだけの価値があるのか正確に評価して公表することだ。2013年のIMF報告書によれば、政府のバランスシートのなかで非金融資産が占める価値は平均で67%だが、国・地域ごとのバラツキは大きく、日本や韓国は120%、スイスや香港は25%未満となっている。

しかし、これらの数字はほぼ確実に過小評価されている。見えているのは氷山の一角にすぎない。というのも、国の資産の大部分はレベルの異なる場所に隠されているからだ。伝統的に顧みられないケースは多く、時として既得権益者が国民の目の届かない場所にしまいこんでいる。

これらの公共の資産がビジネスに長けた専門家の手に委ねられれば、すべての政府にとって大きな歳入を確保するための新たな道が開かれる。日本郵政公社はIPOを大々的に行い、最近(2016年10月)ではJR九州の上場が話題になったが、民営化だけに頼る必要はないと著者らは考えている。

公共の商業資産を賢明に運用するだけでも、世界では年間2兆7000億ドルの収益が生み出されると試算している。この金額は、インフラ、交通、電力、水、コミュニケーションに現在世界中で費やされている金額を上回る数字だ。日本の潜在能力はこれよりも高い。

ここで肝心なのは、これらの資産の運営を専門家の手に委ねるだけでなく、政治家や政策立案者に干渉されない場所にとどめ、短期的な政治的思惑に左右されない環境を整えることだ。そのためには資産の所有権と管理を、専門家で構成される透明性の高い開発会社、すなわちナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)に任せればよい。

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