建築だけではない。遊郭街、花街という空間全体もまた、えもいわれぬ魅力をもっている。すでに全盛期は遠く、今となっては薄汚れてすらいる街が、かえって独特の湿り気と落ち着きをもっていて、むしろ心にしみる。
「遊郭跡だけではなく、飲み屋街が好きです。酒場が好き。大学3年から高円寺に住んで、ガード下の飲み屋さんでよく飲んでいました。つまみは何でもいい。空気がよどんだ感じが好き。日常ではない空間ですね」
高円寺も大正から昭和にかけてカフェ街があった街だ。今も風俗店が多い。ガード下は飲食店が多く、ぬめぬめした空気感があり、独特だ。
「昭和の街の良さがわからないなんて、ダメな人たち」
「きれいな街に行くとそわそわしちゃう。一方で、こういう昭和の街の良さがわからないなんて、ダメな人たちって、きれいな街が好きな人たちを、ちょっと馬鹿にしているかも」(Hさん)
遊郭跡以外にも酒場を訪ね歩くことはあるのだろうか。
「埼玉の飯能の川沿いにある橋本屋。ただの大衆酒場ですね。それから稲田堤の、やっぱり川の近くのたぬきや。おばさんひとりでやっている茶店みたいなところ。川と電車を見ながら飲みます」。昔の日本映画のワンシーンみたいだなあ。
「音楽はちあきなおみが好き。あとは藤圭子。YouTubeでたくさん見ます。阿佐ヶ谷の映画館ラピュタで上映している映画のテーマ曲などから気になった曲を調べて聴いたりしています」
闇市と遊郭とひなびた居酒屋にはまる若い世代。AIだAR(拡張現実)だのと、日々技術は進歩しているが、人々の心は過去に向かっている。
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