中国が夢見る「世界リーダーの座」という願望 トランプ政権の米国回帰でチャンス到来?
こうしたメッセージは今週、トランプ大統領が環太平洋連携協定(TPP)離脱を正式表明し、アジア諸国と距離を置く姿勢を示したことでさらに強まった。一部のTPP参加国は、今や中国が参加することを期待している。あるいは、中国が主導する自由貿易協定に目を向けている。
「多くの重要な国際会議の場で、中国の指導者は自国の提案を提示しており、世界発展に対し確実に弾みをつけている」と、外務省系列のシンクタンク中国国際問題研究所(CIIS)の蘇暁暉氏は、米国のTPP離脱について人民日報海外版にこう記している。
同氏はまた、「アジア太平洋地域の経済統合プロセスにおいて、自国の指導的役割を常に考えている国々と比べ、中国は『責任』と『進展』により留意している」と指摘している。
中国が今年5月に開催する「一帯一路」国際協力サミットフォーラムは、同国が世界的なインフラと投資においてリーダーシップを発揮する機会の1つである。
その準備に詳しい外交筋によると、同フォーラムは2014年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が行われたのと同じ豪華なコンベンションセンターで開催される可能性が高く、習主席にとって今年最も注目される外交行事となるべくお膳立てをしているという。
「中国はほぼ世界中に声をかけている」とこの外交筋は語った。
中国がリーダーと見られたいもう1つの分野は気候変動だ。トランプ大統領は過去に気候変動問題は「でっち上げ」だと発言したことがあり、大統領選では米国が批准済みの「パリ協定」から脱退すると宣言していた。
中国外務省国際協力局の李軍華局長は、世界が気候変動を憂慮し、各国がパリ協定を尊重するのか懸念していると述べ、「中国に関する限り、主席は中国がその一端を担うとの立場をはっきりと示している」と語った。
厳しい学習過程のさなか
しかし常にこのようにいくとは限らない。より責任ある大国となるべく、中国は長く厳しい学習過程のさなかにある。
2013年、南シナ海の領有権をめぐる長年の争いでフィリピンに腹を立てていた中国は、フィリピンが超大型台風に見舞われた後、わずかな支援しか行わなかった。このときばかりは、人民日報系の国際情報紙「環球時報」も、中国の国際的なイメージが打撃を受けると異を唱えた。
またその過程も順調ではないだろう。台湾問題など主要な核心的課題においては、中国が引くことはないとみられる。
トランプ大統領就任後、中国外務省はまず、「一つの中国」の原則の重要性をトランプ政権が完全に理解することを求めた。トランプ大統領は同原則に疑問を投げかけているが、米国政府はこれまで台湾の主権をめぐる問題において中国の立場を受け入れてきた。
中国はまた、自国の人権問題をトランプ政権が放っておくことを期待している。
人民日報海外版は21日、中国無料メッセージアプリ「WeChat」アカウント上で、トランプ氏の就任演説は「民主主義」にも「人権」にも触れなかったと好意的に指摘。米政治家によって「こうしたことは大げさに宣伝されていたのかもしれない」とコメントしている。
(Ben Blanchard記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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