夢の国産旅客機 “来春離陸”まで3つのハードル
三菱重工業がリージョナルジェット機の本格営業を開始。P&W製新型エンジンの採用も決まった。低燃費と環境への優しさがウリだが、離陸には「空白」の壁が立ちふさがる。(『週刊東洋経済』10月20日号より)
いよいよ三菱重工業は腹を固めた。事業化の最終決定は来春だが、10月9日の記者会見では、佃和夫社長が自らマイクを握った。
「夢の実現に向け全力で検討しているMRJがATO(正式客先提案=本格営業開始)を迎えた。長く米国のパートナーにとどまってきたわが国航空機産業にとって、今こそまさにチャンス到来」
MRJは「三菱リージョナルジェット」の略称。YS11以来の国産旅客機だ。客席数70~90席。リージョナル機は主に国内路線向けで、20年間に5000機の需要を見込む。現在はカナダのボンバルディア社とブラジルのエンブラエル社が市場を二分するが、中国とロシアも参入し、一気に乱戦模様となる。
MRJはリージョナル機では初めて、主翼や垂直尾翼など全重量の30%に炭素繊維複合材を使う。機体とともに性能を左右するジェットエンジンには、米プラット&ホイットニー(P&W)製の採用を決めた。P&Wは軍事用には強いが、民生用はボーイングの最新鋭機「787」向けでも苦杯をなめた。P&WはMRJ向けを民生用エンジン復活の嚆矢とすべく、意欲的な設計を提案している。
「漸進的な改善ではなく、ゲームを変えてしまうエンジン」(P&W・フィンガー社長)。複合素材機体と新エンジンが相まって、MRJは従来機種に比べ2~3割の燃費向上を約束している。
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