App Store 5周年、これまでとこれから アップルのモバイルビジネスはどう変わる?

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「iPhone First」の所以 - 開発者の談

アップルはモバイル市場をリードしてきたが、iPhoneの成長鈍化によって苦戦を強いられ、それを反映して株価は一時700ドルを超えていたところから400ドル台に低迷し、時価総額でもエクソン・モービルに抜き返されて世界第2位となってしまった。

グーグルのAndroidプラットホームや、サムスンのスマートフォンGALAXYシリーズによって激しく追い立てられているアップルだが、App Storeに関しては自信を見せている。6月10日に行われた開発者向けの年次イベントWWDC2013では、600万人の開発者が参加していることを誇らしく発表していた。またiOS 7が発表されると、割れんばかりの拍手がティム・クックCEOに送られていたのも印象的だった。

iOS 7を発表するアップルのティム・クックCEO。アップルは開発者の声に耳を傾けながら、ていねいにデバイスとOSの環境を整備し続けている。

シリコンバレーでは、依然として「iPhone First」という言葉が聞かれる。特に資金力が少ないスタートアップ企業や、感度の高い顧客を捕まえたいブランドは、数の面で劣るとしてもiPhone・iPadでのアプリ提供を優先するのだ。

App Storeに参加することは、開発者にとってどのようなメリットがあるのだろうか。いくつかの開発者に話を聞いた。

Autodeskはこれまで2D、3D CADなどのパソコン向けやプロ向けのグラフィックスソフトを提供してきた。iPhoneの登場に合わせてリリースしたアイディアスケッチのソフト「SketchBook」が大ヒットとなり、企業の戦略にも変化を与えたそうだ。30年間かけて獲得してきた専門性の高い顧客数を3000万人集めてきたが、iPhone向けアプリをリリースしてから2012年までに顧客数は1億3000万人にまで膨らんだという。

またSmuleという新興企業は、スタンフォードで音楽に関するPh.Dを取得した創業者によって作られたが、きっかけはiPhoneがポケットに入る『楽器』になったらどうだろう、というアイディアだった。こちらも世界的ヒットとなったアプリ「オカリナ」をリリースし、毎日1500万人もの人々が同社のサーバに演奏をアップロードするようになった。端末のデザインが共通化しているからこそ、マイクに息を吹きかける、というトリッキーな操作方法のアプリを実現できたそうだ。

老舗ソフトメーカーも、スタートアップも、アップルがデバイスやOSの分断化を防ぎながらOSプラットホームをメンテナンスし、成長させてきたことによって、少ない労力でアプリやビジネスを具現化させることができるようになった点を、大きなメリットととらえている。これは個人にとっても同じことだ。

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