高級レストラン・ひらまつが、中価格帯店「ミュゼ」でも成功した理由
2007年1月オープンのピーク時、レストランの外には2時間待ちの行列が並んだ。現在は整理券を配ることで行列は緩和されたが、160席しかない店にランチで平日350人、土日ともなれば400~500人の客が訪れる。オープンから1年以上経った今でも、開店の11時前には70~80人が並ぶ繁忙状態は変わらない。
この店は02年、パリで初めて外国人としてミシュランガイドによる一つ星を獲得した平松宏之氏が経営するフランス料理店「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ(以下ミュゼ)」だ。平松氏は24店のフレンチ・イタリアンレストランやカフェを展開するひらまつの社長を務めるオーナーシェフでもある。
それまでのひらまつの店は、「レストランひらまつ」など昼の客単価7000円、夜になると2万円以上の高価格帯レストランが中心。昨秋に出版された『ミシュランガイド東京』において、パリ店に続き新たに5店で星を獲得している。しかし、「フランス料理を日本に広げるためには、敷居が高いという既成概念を打ち壊す必要がある」と考えていた平松氏は、中価格帯への挑戦を決意する。
「ミュゼ」の代表的なランチメニュー価格は1800円と2680円。それで客1人当たりの利益が落ちるのであれば、回転を上げることで補える。重要なのは客1人の売り上げよりも、1つの席がどれだけ稼ぐかだ。「ミュゼ」はランチで2~3回転するため、結局、1席当たりの売り上げは高価格帯レストランと遜色なくなる。
とはいえ、理想を実行に移すのは至難の業。それが実現したのはある人物との出会いがきっかけだった。
40店との競合の末 出店を勝ち取る
「ムッシュ ポール・ボキューズ」。現在に至るまで43年もの長い間、三つ星を守り続けるフランス料理界の巨匠との出会いが、ひらまつにとって大きな契機となった。
ボキューズ氏は、02年、平松氏が一つ星を獲得したパリ店を訪れた。そこで平松氏の実力を認め、フランス料理を世界に広めるという想いで意気投合する。ボキューズ氏は超高級店を運営する一方、郊外でリーズナブルな「ブラッスリー」ブランドの店も5軒展開。ボキューズ氏は、このブラッスリーブランドのフランス国外初出店を平松氏に託した。