スイッチ発表後の任天堂株価が冴えないワケ

ディズニーにあって任天堂にないものとは?

筆者は過去14年ほど継続的にハリウッド映画スタジオへの取材を行ってきた。”ハリウッドメジャー”とひとくくりにされがちだが、各社ともカラーが異なり、コンテンツ開発やその事業展開への考え方も異なる。とはいえ、いずれも映画を制作し、それを基礎にフランチャイズを展開したり、映像パッケージを販売、あるいは配信するという基本的な手法に変わりはなく、そうした意味ではちょっとしたカルチャーの違いでしかない。

ところがディズニーだけは、ビジネスに対する考え方が根本的に異なる。理由はグローバルで通用するキャラクター版権を持つことと、それらを中心に「子どもたち」あるいは「ファミリー」といったクラスタを満足させるブランドとして確立していることだ。

たとえば、”ディズニーの完全新作映画”と聞いたならば、それがアニメであれ、実写であれ、ある程度は子どもやファミリー層に近い「ある種の映画」を想像するだろう。”ディズニー映画”はブランドでもあるがジャンルでもある。一方、最大の映画会社であるワーナーブラザース映画を”ワーナー映画”とは言わない。ワーナーそれ自身が何らかのコンテンツを想起させるブランドではないからである。

ディズニーと任天堂の類似性

今さら言うまでもないことだが、ディズニーにとっての一番の資産はディズニークラシックに代表されるキャラクター、さらに長年築いてきたブランドにほかならない。近年、スターウォーズやマーベル系ヒーロー版権など、グローバルで通用するキャラクターを取得してきたのも、キャラクターのポートフォリオを強化するためだ。

ゲーム業界において任天堂は、ディズニーに極めて近い立ち位置を得てきた。

コンピュータゲーム機の能力向上にともない、”おもちゃ”から大人も遊べる本格的なエンターテインメントへの展開を指向したソニーとは異なり、”子どもとファミリー”を中心に現代の遊びを創り出すのが任天堂であり、そこにはゲームを遊ぶ子どもたちだけでなく、買い与える親に対してもある種の安心感、信頼感をもたらすブランドだ。そこにグローバルで誰もが知るキャラクターが絡み合うことが、任天堂という企業の魅力でもあった。

両社の価値を単純に比較することはできない。しかし、ある切り口において業界こそ違うものの、ディズニーと任天堂には類似性が認められる。

しかし、決定的に異なる部分もある。両社の立ち位置や本質的な強みには似ているところはあるが、ビジネス展開の幅は圧倒的にディズニーのほうが広い。

ディズニーは映画、テレビ番組、音楽などさまざまなメディアを通じて、”ディズニー的”と期待されるコンテンツを生み出し続け、さらには前述したように”ディズニー的なキャラクターとなれる”版権を取得して、そのポートフォリオを拡張している。

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