トヨタ「ハリアー」の人気が落ちていない理由 国内専用車に転じた高級SUVの魅力

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おかげでハリアーは、従来型のSUVとは一線を画す先進的かつ高級感あふれるデザインや、舗装路での洗練された走りをものにしていた。ファッショナブルなデザインとスポーティな走りを楽しむクルマという、現在のSUVのトレンドのきっかけになった1台だった。

にもかかわらずエントリーモデルの価格は250万円以下と、昔も今も日本の高級車代表としておなじみの「クラウン」より、はるかに安かった。多くのユーザーがハリアーに殺到したのは当然だ。

ハリアーが成功すると、まもなくBMWやポルシェなどが、やはり同クラスのセダンのプラットフォームやパワートレインを活用することでSUVの新型車を送り出し、ヒットにつなげた。その流れは最近のベントレーやマセラティにまで続いている。現在のプレミアムSUVブームは、ハリアーなくしては生まれ得なかったかもしれない。

テレビCMも印象的だった。タキシードを着たライオンがハリアーを駆って仕事をスマートにこなし、女性をエスコートするシーンは、プレミアムSUVのキャラクターを的確に表現したもので、「ワイルド・バット・フォーマル」のキャッチコピーとともに、ハリアーを記憶に残る1台にしていった。

ハリアーの先進性をさらに強調したこと

ハリアーの先進性をさらに強調したのが、2代目に用意されたハイブリッド車だった。トヨタでは「プリウス」「エスティマ」「クラウン」などに続く導入だったが、当時のプリウスが1.5リットルという車格相応の排気量のエンジンを用いていたのに対し、ハリアーは3.3リットルのV型6気筒という、ガソリン車の上級仕様に匹敵する大きなエンジンにモーターを組み合わせ、圧倒的な高性能と低燃費を両立していた。

高性能と低燃費を両立するというこの考え方、実はレクサスのハイブリッドカーのコンセプトであり、続いて登場したセダンのLSやGSも似たような構成になっている。しかし日本ではトヨタブランドとして販売されたので、ハリアーのプレミアム性を一層強調する結果になった。

そんなハリアーにとってターニングポイントとなったのが、日本でのレクサスRX発売だった。2009年に行われた3代目へのモデルチェンジと同時に、ハリアーはRXへ移行することになったが、ハリアーは消えなかった。存続を望む声が多かったことから、従来型を継続して販売することにしたのだ。

この時点でのハリアーは、レクサスRXと比べればひと世代古かったことになる。一方、エントリーモデルで200万円台からの設定のハリアーに対し、RXは4気筒ガソリン車がなかったこともあって最も価格の安い仕様でも400万円台スタートと、価格にはそれ以上の大差があった。これでは気軽に乗り換えできない。よって一部のユーザーは引き続きハリアーを求めることになったのである。

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