ヤフオクが象牙取引を取り締まらない理由 日米ヤフーに対応の差

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「グレート・エレファント・センサス」などの調査によると、アフリカゾウは国際取引が禁止されて以降、個体数は回復傾向を示していたものの、2007年ころから密猟により再び減少に転じ、この7年間で全体の約3割に当たる14万頭が減った。近年、年間2─3万頭のペースで密猟されていると言われており、15━20分に1頭の割合で殺されている計算となる。

ただ、全体では減少しているものの、国ごとにみると増減まちまちで、これが議論を複雑化させる要因にもなっている。現在、アフリカゾウの管理は全体で減少していることを念頭に対策が立てられているが、保全に成功している一部の国では、農作物が荒らされたり、人が襲われたりする「獣害」も発生している。

環境省の担当者は「保全に成功した国は少数なので国際社会には届きにくいが、彼らの声をしっかり受け止めないと、保全しても生活が脅かされて密猟時代の方が良かったということなりかねない。保全が地域住民にもメリットになる制度設計が必要だ」と話す。

「日本は閉鎖すべき市場ではない」

昨年10月に開催されたワシントン条約締約国会議では、すべての国に対して象牙の国内市場閉鎖を求める勧告が採択された。取引を続ける日本にとっては一見厳しい内容に映るが、閉鎖を求める市場は「密猟や違法取引に寄与する」国内市場に限定されており、「政府がしっかり管理している日本市場は閉鎖すべき市場には当たらない」(環境省)との立場だ。

だが、先に紹介した登録制度のように、管理の甘さを指摘する野生生物保護団体は少なくない。

トラフィックの若尾ジャパンオフィス代表は「わたしたちは密猟の原因が日本に市場があるからだとは考えていないが、このまま何もしなくていいとも思っていない」と指摘。「日本政府が制度の抜け穴をふさぐ対応をしないのであれば、残念だが象牙取引はあきらめるしかない」と話す。

トラ・ゾウ保護基金は、ヤフーと親会社のソフトバンクグループ<9984.T>に対して、象牙取引を止めるようインターネットで署名を呼びかけている。国際的な社会運動サイト「Avaaz」では、150万人の目標に対して、145万人超の署名が集まった。

こうした批判にさらされてまで、ヤフーはなぜ象牙取引の場を提供し続けるのか。

ヤフー幹部は「損得だけを考えれば、今すぐ中止した方が楽だが、それはすべきではない。恣意(しい)的に運営すれば、利用者の信頼を失いかねない」と話す。取引を継続している背景には「日本の象牙取引はアフリカゾウの密猟には直接的には関係していない」という認識が大前提にあるが、ヤフーはこの問題を多様性の尊重はプラットフォーマーの責務という観点でとらえている。

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