象牙規制、中国の「転向」で日本が非難の的に 甘い在庫管理、「床の間象牙」把握できず
ワシントン条約では、種の絶滅を防ぐために取引に制限が必要な野生動植物を3区分に分類し、レベルに応じた規制をかけている。附属書Iは絶滅のおそれがあり、その原因は国際取引にあると判断されている種で、国際取引は原則禁止。附属書IIは必ずしも絶滅の恐れはないものの、取引規制をしなければ絶滅のおそれがある種で、一定の条件を満たし輸出国が許可すれば取引はできる。
では、アフリカゾウはどこに区分されているのか。アフリカゾウは1980年代に密猟が激化したため、1989年に附属書Iに掲載され、翌1990年から象牙の国際間取引は原則禁止となった。その後、1997年にボツワナ、ナミビア、ジンバブエの南部アフリカ3カ国、2000年には南アフリカ共和国が附属書IIに戻されたが、他の国のゾウに影響を与えかねないとして取引を制限する「注釈」がつき、現在も実質的に取引ができない状況になっている。
その後、南部アフリカ諸国の強い要望もあり、1999年と2009年に2回だけ自然死や有害駆除されたアフリカゾウの象牙の輸出入が認められたが、これ以外で国際取引は行われていない。つまり、日本政府の主張が正しいとするならば、現在、日本に流通している象牙は1989年以前に輸入されたものか、その後の2回で輸入されたものということになる。
合法的に輸入された象牙は約2095トン
日本がワシントン条約の締約国になってから象牙の国際取引が禁止されるまでの間(1981年から1989年)に合法的に輸入した象牙は約2006トン。さらにその後の2回の輸入で89トンが入ってきており、合法的に輸入された象牙は約2095トンにのぼる。
合法的に輸入されたと言っても、すべてが自由に売買できるわけではない。象牙は「種の保存法」による規制の対象となっており、全形については、あらかじめ登録を受けたものだけが国内取引ができる。全形ではない象牙製品やカットピースも届出業者だけが取り扱い可能だ。
ただ、この登録制度が甘いため野生生物保護団体などからたたかれる原因にもなっている。
「日本政府が在庫を把握できていないことは非常に問題だ」──。野生生物の取引を監視・調査する英国に本部を置く非政府組織(NGO)「トラフィック」の若尾慶子ジャパンオフィス代表はこう語り、管理体制の強化を訴えた。